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2006.04.04

寺山修司の鬼才とスウィフトの奇才

 寺山修司率いる「天井桟敷」の『奴婢訓』を国際貿易センターまで観にいったのは、まだ20代のはじめのころだった。
 衝撃だった。
 いっぱしの演劇青年のつもりだった私は、天井桟敷に入団しようかと思ったくらいだった。
 当時の演劇誌には、天井桟敷の入団案内が必ず載っていて、「小人、せむし、大女大歓迎」みたいなことが書いてあった。

 私の手元には、いつか古本屋で100円で手に入れたスウィフトの『奴婢訓』(岩波文庫)がある。
 怪作である。寺山らしい、と思った。

 しかし、この本で真に驚くべきは、併載されている、
「貧家の子女がその両親並びに祖国にとっての重荷となることを防止し、且社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案」
 のほうである。

 スウィフトが、この檄文がごとき風刺文を書いた当時、彼が住んでいたアイルランドは貧窮を極めていた。
 スウィフトは、その救済のため、いくつかの政策案を提案するが、受け入れられなかった。

 そこで、書かれたのが、この強烈な一編だった。
 何しろ、「私案」というのは、貧民の赤ん坊を売って食材にしようというのだ。
 わずか10頁余りのこの小編に戦慄した。
 私は、一生風刺文などというものを書く気にならないだろう。

 あのとき、奇才スウィフトと鬼才寺山修司が激突した舞台を観ることができたのは、思えば幸運だったとしかいいようがない。

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