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2006.04.07

ぶら下がった下駄と赤いこうもり傘

 子どものころに、少しでも名作といわれるものを読んできてよかったと思うことがある。
 名作といっても、子供向きにダイジェスト版にしたものはダメだ。読んだつもりになって一生読み直そうとはしないから。

 大人になってから読み返してみて、つくづく子どものころには何もわかっていなかったのだと思う。
 それで、自分も成長したのだと、ひそかな満足感を得ることができるのだ。

 夏目漱石の『それから』を読み返してみた。中学生のときから、これまで何度かこの本を読み返している。
 漱石のなかでも、なぜ、『それから』を選んだのかわからないが、今思えば、割といい選択をしたのではないかと思っている。
 私の知人にも、『それから』を愛読している人が何人かいる。映画化もされている。
 この小説、けっこう問題作なのである。

 一言で言ってしまえば、社会不適応者の不倫物語なのだが、そのテーマが現代にも十分通じているのだ。
 友人の奥さんを奪ってしまう。今でも十分ありうる。職に就かないでフリーターをしている。現代そのものだ。
 しかし、これを中学生が読んでもわからないはずだ。
 特に、終盤の急展開で、これほど緊迫した場面が続いているのには、今回はじめて気がついた。
 一度読んだ本を読み返すと、得したような気分になる。
 
 それから、『それから』を読むたびに、視覚的なイメージが頭に焼きつく。
 それが、冒頭の「大きな爼板(まないた)下駄」と、最終部の「赤い蝙蝠傘」である。

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