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2006.05.27

不況は会議場で起こっているんじゃない。現場で起こってるんだ!

 ある時、テレビを見ていて、ふと涙が止まらなくなったことがあった。
 借金を抱えたバツイチで、子どもを抱えながら、水商売のバイトをしている女性を紹介した番組だった。都内には、このような女性のための24時間託児所がある。
 ようやく夜中に仕事が終えて、もう眠ってしまった子どもとご対面。
 そのシーンで、思わず落涙してしまった。
 自分も、そのころ借金苦だったことや、病気が少し悪化していたせいもあって、涙もろくなっていたのかもしれない。だが、そのときの母子の姿に、とてもささやかな幸せが感じられて胸が熱くなったのだ。

 現在、母親と子どもの関係や、女性の雇用に関して、いろいろな問題があげられている。
 子どもの虐待、少年事件、結婚より職場を選ぶ女性と女性の晩婚化、少子化社会、などなど。
 こうした問題は、ともすれば、今時の母親はとか、いまの若い子はとかいう短絡的なまとめられ方をしてしまう。

 しかし、昔の女性に比べて、現在の母親たちや、仕事を持つ女性たちがだめになっているわけではない。
 変化しているのは、家族のありかたや、職場の環境のほうで、それに対応できていないのが問題なのだ。

 阿古真理『ルポ「まる子世代」』(集英社文庫)は、ちょうど現在社会をになっている1964~69年生まれの女性をとりまく環境が、どう変化してきたかを追った執念のルポである。著者はこの世代の女性を、さくらももこの漫画『ちびまる子ちゃん』からとって「まるこ世代」と名付けた。

 本書で目を開かされたのは、事務職を長くやっている女性のほうが、男性社員や、天下り経営陣より、いまや、会社の経営を客観的に見られる貴重な存在になっているということだ。
 現場の数字を把握している彼女たちのほうが、会社で起こっている事態を冷静につかむことができている。
 その声を聞こうとしない上司や経営陣、会社のシステムは、やはりダメなのだ。

 また、専業主婦の家事が、昔より負担が増加したということもなるほどとうなずけた。
 昔より明るくなった家の中は頻繁な掃除を要求する。選択肢の増えた食生活で、毎日、違う献立を考えなければならない、など、生活の電化や豊かな食生活によって、主婦の負担が増えてもいるのだ。

 母親がずっと子どもについていてあげなければならない、という神話と、母親のストレス、などなど。
 「まる子世代」の視線で、社会を見通してみると、この何十年かで起こった職場環境や家庭環境の変化に気づかないできたことこそ、先ほどあげたような問題群の盲点であったことが明らかになっていく。

 本書は、これまで雑誌などで「プロジェクトXに涙する中高年」や、「自転車通勤」など、ユニークかつ鋭い視点から現代社会の諸相を切り取ってきた著者の集大成ともいえる力作だ。
 私も、この本から、今後の仕事に関するヒントをいくつかもらった。

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