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2006.08.12

心は巧みなる画師の如し

 これまで全集を買った作家は、泉鏡花、内田百間(ほんとは門構えに月)久生十蘭、夢野久作などがある。
 どれも、大学卒業後の無職時代(オイルショック後の就職難の時代)、バイトで稼いだ金をつぎ込んで買ったものだ。

 あと、もしこれから買うとしたら、幸田露伴の全集だ。
 露伴といえば、読まれざる名作「五重塔」が有名だが、そのほかの作品はあまり知名度が高いとはいいがたい。
 「五重塔」だって、ちゃんと読むと泣けますよう。物語の面白さを詰め込んだ作品だ。泣かしのツボが決まっている。

 鴎外、紅葉など同時期の作家に比べても、露伴の文章のうまさは光っている。それでいて、苦労しないで楽々書いたもののように読めるのが憎い。

 露伴『幻談・観画談』(岩波文庫)の「幻談」は、露伴最晩年の作品だが、名人芸の域に達している。
 海釣りで、土左衛門の手からいただいてしまった釣り竿をめぐるちょっと不思議な話なのだが、露伴の蘊蓄がさりげなくそしてぎっしりと詰め込まれている。

 単純なストーリーを話術だけで読み込ませてしまう手腕はさすがである。
 私なぞは、一生かかっても、この域にははるかに達することができそうもない。

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