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2007.05.27

『Little DJ』

ようやく、山を越えた。
とりあえず、緊急な仕事は終わり。
少し前に読んだ、鬼塚忠『Little DJ』(ポプラ社)について書いておこう。

病院という特殊な環境のなかでの物語だが、だれもが思い当たる淡い初恋がテーマとなっている。
私と同じ世代であれば、ラスト近くの逃避行で、『小さな恋のメロディ』(ワリス・フセイン監督)なんていう映画を思い出すのではないだろうか。
幼い恋とは、なぜ、これほど胸をしめつけるのだろう。

私たちは、ふだん、自分のタイムリミットを気にすることはない。
だが、だれにでもタイムリミットはある。それは何十年先かもしれないし、明日かもしれない。
しかし、自分のタイムリミットが間近であることがわかってしまったらどうするか。

この作品の主人公は、DJという仕事に、自分の生の証を託そうと決意する。
病院の患者がDJをするという、ありえそうでありえない設定が、この物語のバックボーンだ。
DJと「ゲスト」との会話から、一人一人の患者の内なるドラマが開示されていく。
これが、この作品に奥行きを与えている。

どうしても伝えたい一言がある。
それを限られた時間のなかで伝えられるのか。
切実なテーマを、読む者もつきつけられる。

ピュアでひたむきな恋物語。
誰にでも、一途なときがあった。
それを思い出させてくれる物語である。
感動でした。

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