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2007.10.21

『幻の声 NHK広島8月6日』

白井久夫著。
岩波新書。

すでに絶版になっているが、ラジオというと、この本のことを思いださずにはいられない。

1945年8月6日、広島に原爆が投下された直後、ラジオから女性の声で、大阪放送局に救いを求めるのが聞こえたという体験談が、ある日NHKの番組に寄せられる。
あの女性はそれからどうなったのか。迫りくる死を覚悟して、必死の放送を続けたのではないのか。それが戦後ずっと気になっている、というのだ。

番組を担当していたディレクター、白井久夫氏は、この投書を読んでショックを受けた。
広島放送局は爆心地から1キロメートルほど。おそらく壊滅したはずだ。
そのような場所で、被爆後、放送することなどできたのか。
もし、できたとしたら、声の主はその後どうなったのか。

真偽を確かめるため、白井氏は17年をかけて、当時の広島放送局の関係者に取材を試みる。
当然のことながら、被爆して亡くなった局員も多い。
しかし、わずかに残る生存者と資料から、当日の放送局の状況を再現していく。

実は、この本に興味をもったのは、私の知っている飲み屋のママさんも、この声を聞いたという話をしていたからだった。
ママさんは、この本の存在も知らなかった。
それでは、ラジオの声はほんとうに流れていたのか。

集まった情報から、白井氏は、いくつかの推論を組み立てた。
そして、最後に戦慄の仮説を提示する。
はじめて読んだとき、思わず鳥肌が立ったものだ。
そんなことがほんとうにあるものなのか。

原爆被爆後、究極の状況下で、ラジオから流れでた声の正体は何だったのか。
「幻の声」はいまも謎を投げかけ続けている。

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