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2011.07.20

人間、この了解しがたきもの

犯罪もの2冊を読む。

世の中には、あまりにひどい事件で、
ニュースにならない犯罪がある。

※以下、犯罪ものが苦手な人は、読まないでくださいね。

『消された一家』豊田正義(新潮文庫)

ほとんど、世の中に知られていない事件だ。
テレビも新聞も詳細に報道するのをためらったからである。

男と内縁の妻が、2家族7人(子ども2人を含む)を殺害。
(実際には、男は直接手を下さなかった)。
妻はDVの被害者で、無理やり加担させられた。

私も、平成14年に、北九州で少女が警察に
保護されたというニュースだけは覚えている。
その後、いっさい、マスコミでは報道されなかった。

犯人の男は弁舌がたち、ときに法廷を笑わせた
ことさえあったという。

人間、この信じ難きもの。


『凶悪』「新潮45」編集部編(新潮文庫)

「先生」と呼ばれる不動産ブローカーのまわりで
連続して発生する、行方不明者、自殺者……。

本件は、死刑判決を受けた殺人者が告発し、
記者が調査して、警察を動かした。

多数の凶悪殺人を犯しながら、平気な顔で生活する
「先生」に戦慄を覚える。

帯には、佐藤優氏が評を寄せている。
「少なくとも過去十年に私が読んだ殺人事件を
 扱ったノンフィクションのなかで
 最大の衝撃を受けた作品である」

あと、埼玉愛犬家連続殺人の共犯者が著した
(ゴーストライターがいるだろうが)
『愛犬家連続殺人』志麻永幸(角川文庫)も
すごい話のようだ。
『悪魔を憐れむ歌』蓮見圭一(幻冬舎)も
同じ事件を扱っているらしい。

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2011.07.15

鏡の魔術

『鏡の魔術』由水常雄(中公文庫)

『鏡の歴史』のように網羅的ではないが、
豊富な図版を使って、美術的観点から見た、
建築、絵画などに関する鏡の歴史を俯瞰する。

図版を見るだけでも楽しい。

前半では、鏡の製造法にも詳しく触れている。
ヴェネチアとフランスの熾烈な戦い。
制したのはフランスだった。

印象に残ったフレーズは、

「西洋の鏡は、あくまでもネルキッソスを破滅させた悪魔的な要素が、イメージの背後にちらついているようである。いいかえれば、東洋の鏡が神聖視されてゆくのとは対照的に、西洋の鏡は邪悪視されてゆく一面を強くもっているのである」

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2011.07.13

鏡の歴史

『鏡の歴史』マーク・ペンダーグラスト著 樋口幸子訳(河出書房新社)

鏡の歴史というより、鏡の百科事典ともいうべき、豊饒な鏡譚の数々。

「古代文明と鏡」「魔法の鏡の時代」「光とは何か」「科学の鏡の時代」「鏡に関する文学」「鏡に関する絵画」「宇宙を捕らえる鏡」「光の正体」「巨大望遠鏡の発展」「鏡と虚栄産業」「幻想と現実を映す鏡」
の全11章からなる。

今日、私たちは、日常的に鏡を見ている。
もちろん、鏡が発明される前は、こんなことも簡単ではなかった。
それこそ、ギリシア神話のナルキッソスのように、
水面に映る自分の顔を見るしかなかった。

そして、金属を磨いた鏡、そして、ガラスに金属箔を張った
鏡が発明された。
庶民でも、手軽に鏡を見られるようになったのは、それ以降である。

鏡に映っているのが自分だと認識できるのは、
高等霊長類と、イルカ、ゾウしかいないらしい。
ヒトでも、生後、20か月から24か月で、
やっと、鏡のなかの姿が十分と認識できるようになる。

ところで、ふだん、鏡で見ている自分は左右が反転している。
だから、写真に写った自分に違和感を覚えることもある。
また、男のほとんどは髪を左側で分けており、
それが男らしさをあらわすと感じられているらしい。

ある仕掛けで、左右反転しない自分の姿を見られる
「トゥルー・ミラー」があるという。

本書で扱われている話題は、どれも、とびっきり面白い。

著者はジャーナリストで、『コーヒーの歴史』(河出書房新社)、
『コカ・コーラ帝国の興亡』(徳間書店)などがある。

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