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2012.05.31

読者という聖域

文庫版。
期限まで今日1日。

読み直していると、つい、
あちこち、手直ししたくなってしまう。
時間との相談だ。


私が勝手に師の一人と仰ぐ呉智英氏が、
かつて、
「読者という聖域をつくらせない」
と述べたことがある。

ふつう、一般読者の投稿や批評などには、
作者が批判したり、反論したりすることはない。
読者は、侵してはならない聖域となっているのだ。


私もアマゾンやブログで酷評されるのには慣れてきた。
だんだん気にならなくなってくるのだ。
理由のひとつは、いくら酷評されても、
売上には大して影響しないからだ(笑)。


だが、たまには、ボコボコにしてやろう。
読者という聖域をつくらせないために。
(本当はストレスたまってるからかなw)。


私のある本の
アマゾン読者レビューでこんなのがあった。

★1つ。
「まったく科学的ではなく、ネット上の
トリビアをコピペしたような糞みたいな
チラシ裏の文章。
久しぶりに、こんな酷い駄書を読んだ。」

まあ、使用済ティッシュの裏みたいなレビューだ。

ツッコミどころはたくさんあるが、
とりあえず、このレビュアーの、
ほかの本に対するレビューも見てみよう。
(ヒマだねえ。本当はこんな時間ないんだけど)

そうしたら★1つだらけだ。
「駄書(駄本?)」というのは、このレビュアーの
口癖らしい。
というか、ほかの表現を知らないようだ。

よくこれだけ「駄書」ばかり読んでるねえ(笑)。
少しは、本選べばいいのに(笑)。

おっ、珍しく★5つの本があった。
健康関連の本。
タハハ(脱力)。
相手にするんじゃなかった。

「痩せた!1週間でお腹が少しだけへっこんだ!
米だけを抜いて、お菓子は普通に食べてたけれど、
それでも少し効果があった!
次からはもっと糖質を抜こうと思う。お菓子を中心に。」


もし、私の本をちゃんと買っていただいたのでしたら、
ありがとうございました!

もし、図書館で借りたか、ブックオフで買ったのなら、
次からは、本物の新刊書店かアマゾンで買ってください!

ね、Wさん。(あ、書いちゃったww)

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2012.05.29

初期ギリシア自然哲学者断片集

ようやく、頼まれていた企画書を
S舎に送った。

S舎の企画書を書くために、
科学書の棚から何冊も本を抜き出した。
これだから、科学書の処分はできないのだ。


久しぶりに、
『初期ギリシア自然哲学者断片集』(全3巻)
日下部吉信編訳(ちくま学芸文庫)
も引っ張り出してみた。

タイトルのとおり、初期ギリシア哲学者の
情報や言動について書かれた断片的な文書
を集めてある。

タレス、アナクシマンドロス、ピュタノゴラス、
ヘラクレイトス、パラメニデス、ゼノン、
アナクサゴラス、レウキッポス、デモクリトス
などなど。

人類の思想らしい思想が生まれる以前の
自然学的、哲学的、倫理学的考察。
原初的であり、断片的だから興味が尽きない。


このうち、金欠病の私を慰めてくれる
デモクリトスの珠玉の名言を3つ。

「多くを欲しないなら、わずかなものでも
 君には多いと思われるであろう。小さな欲求は
 貧をも富と等しい力を持つものにする」

「適度の財産で明朗快活である人は幸福であり、
 多くのそれでも不機嫌な人は不幸である」

「貧乏に立派に耐えることは、節度ある人に
 属すること」

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2012.05.28

砂丘とピンク・フロイド

一時期、「第三の男」や「市民ケーン」などの
名画DVDが、500円くらいで売られるように
なって、嬉しいよりなにか寂しい気がした。


ところが、最近は、先日書いた
フェデリコ・フェリーニ監督作品や、

ルイス・ブニュエル監督の、
「自由の幻想」「小間使の日記」
「ブルジョワジーの密かな愉しみ」、

あるいは、ミケランジェロ・アントニオーニ監督、
「砂丘」などのDVDが、
900円から1000円くらいで売られている。


こんなに安くて嬉しいことは嬉しいが、
うら悲しくもある。


アントニオーニ監督の「砂丘」は、
なかでも、わすれがたい映画だ。

ラストで、いろいろな爆破シーンが
スローモーションで映し出され、
バックに流れる、ピンク・フロイドの
「51号の幻想」とともに、
この世のものとも思えぬ美しさだった。

ピンク・フロイドの曲は、2、3曲
使われていたのではないだろうか。


映画の話からそれるが、
いつか、エジプトのホテルの一室で、
はるか砂丘に沈む夕陽をぼんやり眺めていた時、
部屋の有線放送から、ピンク・フロイドの
「エコーズ」が流れてきて、
鳥肌ものだったことがあった。

エジプトの砂丘と落陽と「エコーズ」。
生涯でも忘れられないシーンだ。

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2012.05.27

ブック・パーティーが終わって

連塾最終回。
5月26日午後1時~8時及び本宴。

7時間にわたる講演・ゲストパフォーマンス。
あっという間にすぎてしまった。

最後、グールドのピアノ曲が流れるなか、
スタンディングオベーションになって、
不覚にも涙が……。

途中、ゲストの方の話でドキッとしたのは、
お二人が、好きな作家として坂口安吾を
挙げていたことだった。
その日、もって歩いていた本が安吾だったからだ。


続く宴会の雑談タイム、壇上の松岡さんに会うため、
列に並ぶ。
そろそろ、会も再び始まりそう。
列はまだ続く。
あせった。

結局、松岡さんに会った瞬間、再開合図が。
握手をしながら、
「まだ、ライターやってます!」
「知ってるよ!」

それで、終わってしまった。
せめてもう一言、話したかったのに。

しかし、極上の時間を過ごさせてもらった。
長いこと、ライブの共振時間を味わっていなかった。
ライブの醍醐味、堪能した。

松岡さんが最後に挙げた、
これからの日本のための25冊。
心にそっととどめておこう。
最初は、漱石のあの1冊からかな。

久しぶりの人にもたくさん会えたし、大大大満足!

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2012.05.26

ブック・パーティー・スパイラル

今日は午後から、我が師匠・松岡正剛さんの
「連塾」最終回に出席。

テーマはずばり「本の自叙伝」。

13:00から19:30分までの長丁場。
いまからワクワクする。

20代前期・中盤を松岡さんの下で過ごした。
いまでは雲上の人になってしまったけれど。


お互い、長い年月を経た。
会える時に会っておかなければ、と思った。

いまや「千夜千冊」を知らぬ読書人はいまい。
それに比べて、私の仕事といったら……。
忸怩たる想いもある。

せめて、細々とでも、読書記録をつけていこう。

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2012.05.25

毛皮を着た美徳の不幸

人選のなかに、
マルキ・ド・サドと
ザッヘル=マゾッホ
を入れることにした。
こうなったら、好きな人選でいくのだ。

残念なことに、
桃源社の「新・サド選集」全8巻も、
同じく桃源社の
「ザッヘル=マゾッホ選集」全4巻も、
処分してしまっていた。


しかし、サドに関しては、
桃源社「澁澤龍彦集成」の2巻目が、
サド論集であり、澁澤さんの、
『サド侯爵の手紙』(ちくま文庫)もある。

マゾッホについては、種村季弘さんの、
『ザッヘル=マゾッホの世界』(筑摩叢書)
を図書館で借り、
マゾッホ『毛皮を着たヴィーナス』(河出文庫)
を書店で買った。

『毛皮』は、アマゾンで1円があったが、
但し書きに「使用感あり」とあったのでやめた。
マゾッホの本で使用感って……。
ちょっと、引くものがある。


あと、サドの『美徳の不幸』(河出文庫)
くらいは入手しておこうか。


マゾヒズムの語源となったマゾッホは、
サドほど知名度はなさそうだ。
桃源社の選集もときどき古書店で見かけるけど、
再度、手に入れることもあるまい。

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2012.05.24

贅沢な黙示録

昨日は、B文庫さんと打ち合わせ。
今月中に、加筆修正を終わらせる。
頑張りまーす(汗)。


仕事の必要で、

秋元康『贅沢な遺言』(主婦と生活社)
    『君ってこういう人?』(幻冬舎)
つんく♂『一番になる人』(サンマーク出版)
ビートたけし『下世話の作法』(祥伝社)
       『ビートたけしの黙示録』(徳間書店)
にざっと目を通す。

う~ん、秋元さんとつんく♂さんは、それなりにいいこと
言ってるけど、やっぱり使えないな。

たけしさんは、凄すぎて、やはり使えない。

ほかの人選考えなければ。
う~ん(冷汗)。

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2012.05.23

変身した異邦人が絶望

カミュ『異邦人』(新潮文庫)
   『太陽の讃歌 カミュの手帖1』(同)
   『反抗の論理 カミュの手帖2』(同)
カフカ『変身』(岩波文庫)
頭木弘樹編訳『絶望名人カフカの人生論』
(飛鳥新社)


一緒くたに読んでいたら、カミュとムルソーと
カフカとザムザの人生がミックスされてきた。

作者と主人公の人生がカブってくるのだ。
混乱してどれがどれだかよくわからん!


カミュとカフカは「絶望的な文学」として、
よく比較されるらしい。

私見では、両方とも、絶望的には思えないけどな。
とくに、『異邦人』なんて、
妙にカラッとしたところがある。

『変身』も絶望というのとは少し違うかな。
「無関心」という感じがする。
その無関心がまた怖いのだけど。


う~ん、しかし、両方とも再読してみて、
やはり、ガキの頃には何もわかっていなかった。
しかし、だからこそ、若い時に、
読んでおいた価値があるのだろう。

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2012.05.22

歳をとるとなぜ1年は速くなるのか

どんな操作をしてしまったのか、
入力ソフトが、いつの間にか、
MS-IMEからBaidu-IMEというのに
替わっている。

これ、中国・百度のソフトじゃないか。

ところが、使ってみるとすごく軽快で、
MS-IMEなど、比べものにならない
くらい賢い。

無料ソフトだし、
しばらく、試験的に使ってみるつもり。

ところで、年をとると年々1年が速くなる。

竹内薫『一年は、なぜ年々速くなるのか』(青春新書)
によると、


「時計の振り子のように、われわれの「体内時計」
の時の刻みも、身体の大きさに比例する」〈スケーリング仮説〉

「若者の「今」は三秒くらいだが、歳をとるとともに
 「今」は間延びして五秒くらいになる」〈ペッペル仮説〉

「歳とともに左脳の時計係がサボり始める」〈右脳優位仮説〉

「歳のせいで身体と頭が効率よく働かなくなり、
 達成率が落ちる」〈加齢効率低下仮説〉

「記憶に残るような出来事が減り、毎日が記憶に
 残らない、単調な繰り返しになる」〈『魔の山』仮説〉


これだけではわかりにくいと思いますが、
詳しくは、本書を読んでください。
魅力的なテーマです。
私は、けっこう、納得できました。

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2012.05.21

世界でいちばんビンカンな場所

金環日食は、なんとか起きだして雲でボヤケたのを見た。
朝の4時に寝たばかりだったから、寝ぼけていた。


以前、いただいた本で、
露骨な金儲け主義の内容の本があって、
正直、この手の本はまったく興味がなく、
破棄することにした。

何億円稼いだからなんだというのか。
(そりゃ、欲しいよ、欲しいけど)
何億も稼いで、あと半年の命だといわれたらどうする?
稼ぐのが目的になってしまっているのだ。

こんな本が売れるんだなあ。


●ハレンチなタイトルだけど愛すべき名曲3

★「女はそれを我慢できない」アン・ルイス

 「六本木心中」の「長いまつげがヒワイねあなた」や
 「男らしさを立てておくれ」という歌詞は、
 湯川れい子の詩が気に入らなくて、
 アン・ルイスが、無理やりソーニューしたらしい。
 過激だねえ、この歌姫は。


★「後ろから前から」畑中葉子

 「もっと動いて」「左手で愛して」なんていう
 曲もある。
 仕事のために、
 こんな歌も歌っちゃうけなげなところが好きかな。


★「世界でいちばんビンカンな場所」ERINA

 ERINAは、1984年ミス・セブンティーンの村田恵里のこと。
 橋本舞子とかFUNNY GENEとか、いろんな名前で
 活躍しているらしいけれど、このERINA時代がいちばん好きかも。

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2012.05.20

セシウムの秘密


最近、放射能として忌み嫌われているセシウム。

実は、身近なところで役立っています。

現在、時計のなかでもっとも正確な原子時計には、
セシウムが使われているのです。

使われているのは、セシウム133。
正確な言い方ではありませんが(※)、
セシウム133は小さく振動しています。
その振動の、
91億9263万1770回が1秒とされているのです。

これでも、10万年に1秒狂うそうです。
もっとも、その頃、人類がまだ存続しているか
どうかわかりませんが(笑)。


正確には、
「セシウム133原子の基底状態の2つの超微細準位間の
遷移のうち9192メガヘルツ付近にあらわれる
スペクトルの91億9263万1770周期の継続時間が1秒」
です。

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2012.05.19

堕落論

「生きよ堕ちよ、その正当な手順のほかに、
真に人間を救い得る便利な近道がありうるだろうか」

高校生の僕は、これにやられてしまった。

坂口安吾『堕落論』(角川文庫)

久しぶりに読み返してみた。

やはり、ガキには、この本の本質を、
見抜くことはできていなかった。

単に「堕落」という言葉に過剰反応した
だけだった。

安吾は、大戦後、いや戦中から、冷徹な目で、
日本、および日本人を見守っていた。

あれほど神聖視されていた特攻隊員の勇士は、
闇屋を始め、
貞節を讃えられていた未亡人は、
新たな恋を芽生えさせている。

彼らは堕落したのではない。
人間に戻っただけだ。

安吾の堕落論は、無理してきた日本人に、
いったん堕ちて、改めて人間をやりなおせ、
といいたかったのだ。

これを機会に安吾の本を読み直してみよう。

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2012.05.17

何も考えない技術

よく眠れないときなど、いろいろなことが
頭に浮かんできて、なお眠れなくなることがある。

そういうときは、もう考えるのはよそうと
思うのだが、そう思えば思うほど、
よけいな考えが浮かぶ。
それも、たいてい悪いことばかり。

これは、心を無にするような、
禅寺の坊さんみたいな修行をしなければ、
ダメなのかと思っていた。


しかし、
岡田尊司『人はなぜ眠れないのか』(幻冬舎新書)
によると、
何も考えないことは、少し訓練をすれば、
誰でもできるようになるのだという。
ひたすら、考えない努力を続ければいいというのだ。
現に著者はできるようになったと。


なんだ、そうなのか! 目からウロコ。
勝手に、禅寺にでも行かなければできないことと
決めつけていたのだ。


最近は私も、嫌なことを思い出しそうになったら、
すぐ、「考えない、考えない」と頭から振り払うように念じると、
気持ちを切り替えられることがわかった。

なにごとも、思い込みはよくないね。

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2012.05.16

数のつく作家


これ、すでに公表したものだけど。
再掲。

数字の付く作家を集めたら、
こんなんできました。

一郎はもっといるかも。

●異端作家神秘の数列

谷崎潤一郎 『異端者の悲しみ』『刺青』
蘭郁二郎  『夢鬼』『火星の魔術師』
甲賀三郎  『姿なき怪盗』
浜尾四郎  『殺人小説集』
橋本五郎  『鮫人の掟』
団鬼六   『花と蛇』『夕顔夫人』
野溝七生子 『女獣心理』
小泉八雲  『怪談』
辰野九紫  『廃曲オップリメリン』
久生十蘭  『地底獣国』『湖畔』

番外
 十一谷義三郎
 海野十三
 直木三十五
 内田百閒
 川又千秋
 久保田万太郎

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2012.05.15

夢と人間社会

●『夢と人間社会 上・下』
 ロジェ・カイヨワ/
 G・E・フォン・グリューネバウム編
 (法政大学出版局)

あの、西洋の南方熊楠とでもいうべき、
知の巨人カイヨワが編集に携わっている。
夢に関する論考・評論集である。

上下あわせて24の論文が掲載されている。
気の向いたとき、少しずつ読んでいるので、
まだ、完読していない。


「夢の威信と問題」ロジェ・カイヨワ
「夢の超心理学」マーティン・エボン
「夢、カリスマ、そして文化英雄」ウェストン・ラ・バール
「夢と文学創造」マリア・ザンブラーノ
「古代近東における占い夢」A・レオ・オッペンハイム

など、魅惑的なタイトルが並ぶ。


「夢と現実が対抗状態にあるとき、ただちに
優位に立つのは夢であって、むしろ現実の方を
否認しようとするのが人間本来の傾向なのだ。
現実の平凡さ、連続性は、夢がもたらす奇跡に
くらべるとき、はるかにわれわれを打つところが少ない」
(カイヨワ「夢の威信と問題」)

私たちが目が覚めたとき、いままで見ていた
蠱惑的な物語が、夢であると知ったときの
あの、やるせない失望感。

私はしばしば、二度寝して、もう一度、
夢の続きを見たいと思う。

その願いがかなえられることはほとんどないが、
その代わり新たな夢がつかの間、渇望を癒す。


ある大手企業の経営者は、夢が嫌いで、
夢を見そうになると、すぐ起きてしまうと
語っていたことがある。

アンビーリーバブル!

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2012.05.14

夢の本

夢探偵のほかには、こんな夢の本がある。

●J・L・ボルヘス『夢の本』(国書刊行会
世界幻想文学大系43)

迷宮の詩人ボルヘスが、集めた夢のコレクション。

「ギルガメシュ」からはじまって、
「聖書」「夜のガスパール」「孔子」
「ルーキーアーノス」「ダランベール」
など、古今東西の夢の記述を集めてある。


●『澁澤龍彦コレクション1 夢のかたち』
(河出書房新社)

ここでは、主に、文学者の描いた夢126個が紹介されている。

澁澤龍彦の序が、夢と夢文学の本質をえぐり出している。

「他人から聞かされる夢の物語くらい、退屈なものはない」

「なかには、いかにも嘘っぽい夢というものもある。
 しかし肩肘張らずに、嘘っぽい夢をも嘘っぽい夢として
 楽しもうというのが私の編集方針である」

「リアリズムなんか犬にでも食われるがいい」


●こちらは夢に関するエッセーのアンソロジー。
埴谷雄高編『日本の名随筆14 夢』作品社

「夢について」島尾敏雄
「夢の風景」金井美恵子
「悪夢者の呟き」中井英夫
「火の夢」吉田一穂
「赤い羽の夢」稲垣足穂

など、魅惑のラインナップだ。

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2012.05.13

夢探偵

筒井康隆編『夢探偵』(光文社)

「〔光る話〕の花束」という
アンソロジーシリーズの1冊。
残念ながら、現在絶版。


一時、夢に関する本を集めていたのだけれど、
本書はそのうちの1つだ。

いっぺんに読むのがもったいなくて、
少しずつ読んだ。

内田百閒「お爺さんの玩具」
星新一「願望」
安部公房「阿波環状線の夢」
澁澤龍彦「夢」
筒井康隆「法子と雲界」

などなど16編の作品が集めてある。
付録として、編者筒井康隆の
「夢の検閲官」が載っている。


それぞれおもしろいが、なかでも、
半村良の「夢の底から来た男」が圧巻。

編者の筒井康隆が最も思い入れの深かった
という作品。

そのおもしろさは、私が説明するより、
筒井康隆の解説を引用しよう。

「読者諸氏におかれては、この小説に
とりかかる前に、さしせまった身の
まわりの用事を先にすませておいて
いただきたい。というのも、これは
読みはじめると途中で中断することが
できない作品だからである」

幸せな生活に迫ってくる黒い影。
いつしか現実が夢に変容してくるおそろしさ。

いや、へたな解説はやめておこう。

「夢の底から来た男」は、角川文庫、
広済堂文庫に入っていたようだが、
古書しかないようだ。

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2012.05.12

オーレリア


ネルヴァルの「オーレリア」を久しぶりに読んだ。
実は、いまのマンションに引っ越すとき、
ちょうど古本屋を始めた友人に、蔵書の一部を、
預かってもらっていた。

急に、ネルヴァルが読みたくなったので、
送ってもらったのである。

筑摩書房の3巻もののほうの『ネルヴァル全集』だ。
現在は同じ筑摩から6巻ものが出ているが、
主要作は3巻ものでも読むことができる。


「夢は第二の人生である」という有名なフレーズで
始まる「オーレリア」は、すでに狂気に捉えられていた
ネルヴァルが、縊死に至るまで書き継いだ遺作であり、
最高傑作である。

文学史のなかで、これほど、「夢」をみごとにテーマ化した
小説があっただろうか。
ネルヴァルのなかでは、夢は、まさしく第二の人生なのであり、
夢は現実世界に浸食し、現実世界は夢に溶融してゆく。
その現実と夢のあわいを幻視者ネルヴァルは放浪する。

理想の女性オーレリアは、あたかも夢にでてくる捉え難い
ニンフのように、また、はかなく現実からも夢からも
旅立ってしまう。


ああ、こんなことしてるから仕事が進まなくなる。

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2012.05.11

トリマルキオの饗宴

日本の原発(商用原発)がすべて停止している。
東電は家庭用の電気料金値上げを発表。
企業にもそうとうの影響を与えそうだ。
さて、これからどうなるのか?
だれか、ちゃんと考えてくれている人がいるのか?
わからんなあ……。


青柳正規『トリマルキオの饗宴』(中公新書)
サブタイトルは「逸楽と飽食のローマ文化」
(講談社学芸文庫として再刊されるらしい)

ペトロニウスの『サテュリコン』(岩波文庫)を読んだか、
フェリーニ監督『サテリコン』を観た人なら、
必読の書。

観てない人でも、一種のグルメ本として楽しめる(?)
かもしれない。

小説も映画も、圧巻は「トリマルキオの饗宴」という、
豪華絢爛のパーティーだ。

ローマ、ネロ帝の時代。
トリマルキオは奴隷から成り上がった大富豪である。
このトリマルキオが主宰する饗宴には、取り巻きや
文化人が大勢招待されている。

著者は、当時の資料から、
会場の様子、豪華料理を、図入りで再現していく。

前菜、メインコース、デザート。
趣向を凝らした料理の数々が紹介される。

サテュリコンマニアにとっては、垂涎の一冊なのだ。

映画を観た人は、当場面と、本書の再現した料理
などを比べてみるという楽しみもある。

また、ネロ帝の時代の風俗を理解するためにも、
重要な示唆のある本である。

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2012.05.10

にんげんだもの???

私の先輩ライターにNさんという人がいました。

あるとき、このNさんが、私の文章を読んで、「もっと、自分の言葉で書けよ」と言ったことがあります。
でました! 私、「自分の言葉で書け」なんていう人は絶対信用しないのです。なぜなのかは、書きだすと長くなるので省略します。

「君の文章を読んでると、道端に吐かれたタンを見たような気がする!」。
まあ、どう感じようが勝手です。しかし、次の一言は噴飯ものでした。
「たとえば、相田みつをのような文章を書けよ」。
よりによって、私に向かって相田みつをですよ!


後日、私やNさんがお世話になっていた編プロの社長さんが亡くなったときのことです。
火葬場からお寺に向かうご親族の車を、皆でしんみり見送っていました。すると、後ろで変な気配がしました。
「行くな~、行くなよ~」。なんとNさんが、床に這いつくばって車の方に手を伸ばし、叫び始めたのです。これは比喩でもなんでもなくて、ほんとに腹ばいになっていたのですよ。

まわりの人間は対応に困って、見て見ぬふりをしていました。
その後もさらにNさんはヒートアップ。泣き叫ぶ声はどんどん大きくなり、足をバタつかせています。

このとき、ふいに相田みつをの名が浮かんできました。
N先輩、きっとあなたは、こういうふうに皆に訊いてほしかったのではないですか。そして、こう答えたかったんですよね。
「Nさん、だいじょうぶですか? どうしたんですか?」
「だって……、だって……、にんげんだもの……」 

終わり。

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2012.05.09

石さまざま

今週は修羅場になりそうだ。
なんとか乗り切らねば。


古書店で『世界の文学14 ケラー シュティフター』
(中央公論社)を100円で買う。
シュティフターの「石さまざま」が全訳されている。

たしか以前、松籟社の『シュティフター作品集』の
「石さまざま」の巻を買っていたはずだが、
見つからなかった。処分してしまったのだろう。
なので、これはお買い得。


「みかげいし」「石灰岩」「電気石」
「水晶」「白雲母」「石乳」の6編から成る。

石に託して、少年たちの純な魂を称揚している
珠玉の作品群。鉱物感覚もたっぷり。
心を洗いたいときに1編1編読んできた。

岩波文庫にも入っているが(『水晶 他三篇』)、
全訳ではない。

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2012.05.08

フェリーニのローマ

仕事中。

アマゾンで、フェデリコ・フェリーニ監督の
『サテリコン』と『フェリーニのローマ』が
なんと1000円に満たない額で売られている。

これなら、店でビデオからDVDに焼き付けて
もらうより安い!

なにしろ、これまで観た映画でベストテンをあげろと
言われれば、半分くらいはフェリーニ作になってしまう。

この2本は、フェリーニの絶頂期に撮られた映画で、
人工美の極致。
ストーリーはあってないようなフェリーニワールド。
何度観ても飽きることがない。


私的に、フェリーニ映画のベストテンをあげると、

1 フェリーニのローマ
2 サテリコン
3 フェリーニのアマルコルド
4 カビリアの夜
5 女の都
6 カサノバ
7 81/2
8 魂のジュリエッタ
9 甘い生活
10 フェリーニの道化師

まだまだあるけど、とても入りきらない。
DVDになってないのもたくさんあるようで残念。

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2012.05.07

遠くへ行こう

連休は仕事仕事で終わる。
そして、今日も。

お気に入りのCDを引っ張り出してきて、
机の上にどんと置き、
片っぱしからBGMにする。


あとは、私以外の人にはたぶん興味ない、
お気に入りCDの話です。


昔、中古CD屋で、ジャケットだけ見て、
買い集めたマイナー(失礼!)女性ボーカルがほとんど。
でも、中身もよかった。

●蛍「ふくらましすぎた風船のように」
 暗い女子中学生がささやくように歌う暗い歌。

●松崎ナオ「風の唄」
 奇才・渡辺善太郎の編曲が光る。

●MINAMI「Shara of Love」
 キュートでやるせない。

●葛谷葉子「MUSIC GREETINGS VOLUME ONE」
 ルックスも切なそうな歌も好き!

●佐藤聖子「SATELLITE☆S」
 幼さと明るさと印象的な声。 現在はフラメンコダンサーだとか。

●Melody「Love Bomb!」
 ポニーキャニオンのアイドル路線では珍しいお色気グループ。

●TRINITY「TRILLIONS」
 完全にルックスだけで買ったけど、ノリのいい曲。

●区麗情「SHANGRI-La」
 忘れ難い声、ベールのかかった素顔。

●唐沢美帆「sparkle」
 一時、優香と一緒にニトロというグループにいた。

●相対性理論「ハイファイ新書」
 グループ名も革命的だが、曲も革新的。

●上田まり「empty page」
 名曲「遠くへ行こう」が入っている。

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2012.05.06

無人列島

先日、駅前を歩いていたら、
「自叙伝無料です」というプラカードを
もっている男がいたので、もらってみたら、
『平和を愛する世界人として』○鮮明
という本だった。

なるほど、大学の新入生をターゲットに
しているのだろう。

通りは右翼の街宣カーと警察車両がやたら多かったし、
騒然としていた。右翼と統一は反共では同じか。


●忘れかけていた映画監督
 金井勝監督
 この前、ふと思い出した。
 日本の前衛映画の最高峰。寺山修司と並ぶ奇才。
 1969年の『無人列島』から、『GOOD-BYE』、『王国』と
 立てつづけにムズカしいけど新鮮な問題作を発表した。
 当時、ムズカしいことはカッコいいことと考える少年
 だったので、夢中になって観に行った。
 全然理解できなかったけど、
 その後の私の表現活動に多大な影響を与えた。

 念のため、アマゾンで調べてみたら、『無人列島』の
 VHSビデオしかなかった。でも、最近まで活躍していたようだ。


※以降は、不快な気分になる人もいるかもしれませんので、
  閲覧ご注意ください。ホラー映画が好きな人は大丈夫。


●後味の悪い映画3 (ただし、つまらない映画は除く。
 つまり面白かったけど後味の悪い映画)

★デヴィッド・フィンチャー監督『セブン』

 映像や表現は定評あるが、これくらい
 救いのないラストも珍しい。悪夢だ。
 でも、嫌いじゃないんだよな。

★ラース・フォン・トリアー監督『ダンサー・イン・ザ・ダーク』

 むしろ、ゲテモノ映画といってもいいのではないだろうか。
 CMで「感動しました」と泣いていた観客が理解できない。
 そりゃ、私も泣いた。3分の2くらいのところまでは。
 私の妻は「もう、いいよ~!」と叫んだくらいだ。
 でも、一見の価値あり。満足だった。

★ジョエル・M・リード監督『悪魔のしたたり』ヘア無修正版(笑)

 チープなつくりのわりに妙にリアル。エグイ。
 見世物小屋で発生する、誘拐、監禁、殺人……。
 うーん、ラストは妙にテンション高く明るいのだが……。
 全然違うけど、イーライ・ロス監督『ホステル』の後味に
 似ている。あの日本の娘が目に焼き付いて……。

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2012.05.05

食卓の賢人たち

天気の変化が激しい。
調子でない。


アテナイオス『食卓の賢人たち』(岩波文庫)
読む。

ローマの暇な物知りたちが、
食事をしながら、それぞれ、
まったくどうでもいいウンチクを
延々と披露していく。

「さらに彼は言う、この平原に「掘り魚」と
称される魚がいる。(略)この水といっしょに
魚も枝分かれした流れに入り込んで、
餌を求めて地下を泳いでいる(略)。
その結果この平原中どこでも地下の魚が
たくさんいることになり、人々は地面を
掘っては捕っている(後略)」

ほんとかよ!

およそ、なんの役にも立たない知識ばかりだ。
当然、この本を読んでも自慢にもなんにもならない。
だけど、そこが好き!

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2012.05.04

アナーキズム・ナショナリズム

明日は、闘う思想家・浅羽通明氏の講演
「日本の現在」を聞きに行くため、
彼の著書を簡単に読み直すつもり。


浅羽さんとは、彼が学生時代からのつきあいで、
当時、私がいた出版社によく来ていた。
一緒に早稲田の学園祭を演出したこともあったっけ。
懐かしい!

その彼も、いまでは著書多数、多くのファンを
もつ、人気思想家となった。


その浅羽通明氏の代表作の一つが、
『アナーキズム』『ナショナリズム』
(いずれも、ちくま新書)。

筑摩書房の名全集『現代日本思想大系』全35巻の
同名巻へのオマージュである。

『アナーキズム』では、「大杉栄」「竹中労」
「埴谷雄高」「宮田登」「鶴見俊輔」「松本零士」
など10名の新テキストをもとに、現代の問題を
アナーキズムの観点から洗い出す。

『ナショナリズム』も同様だ。


いかにも現代人が敬遠しそうな、「アナーキズム」
や「ナショナリズム」を武器としたのが、
彼の真骨頂だ。
もちろん、彼はアナーキストでもナショナリスト
でもない。いやどちらでもあるかもしれない。


いまでは忘れ去られそうな「アナーキズム」
「ナショナリズム」が、現在の問題を解く
鍵となる。


さて、今度の浅羽さんは、どんな話をするんだろう。
あすの講演が楽しみだ。

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2012.05.03

生霊(いきすだま)

午前3時過ぎ。
なかなか仕事は終わらない。

気分転換がしたいけれど、小説を読む
時間はない。
ああ、あの漫画をまだ読んでいなかった。


ささやななえこ『生霊(いきすだま)』
(角川ホラー文庫)

女性漫画作家には、怖い漫画を描く
名人が多いけれど、この人のは格別。

絵がこはい(笑)。

昔、何かのアンソロジーで、
「空(うつ)ほ石の…」を読んで、
ほんとに怖かったけど、
改めて、この作品集を読むと、
いやあ、やっぱりこはいねえ。

「生霊」「鉄輪」「空ほ石の…」
「通りゃんせ」「はるかなる向こうの岸」
の5作。

やっぱり、夜中に読むんじゃなかった(冷汗)……。

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2012.05.02

イニシエーション・ラブ

昨日、原稿のほとんどは送った。
しかし、まだ残りの原稿がある。
最後の山場だ。


知り合いの編集者さんに、
最近、面白そうなミステリーは何ですか?
と聞いたところ、わざわざ本を送っていただいた。

仕事が一段落したところで、軽く読み始めたら、
止まらなくなって、結局一気読みしてしまった。


乾くるみ『イニシエーション・ラブ』(文春文庫)

裏表紙の説明には、
「最後から二行目(絶対先に読まないで!)
 で、本書は全く違った物語に変貌する」

おお、そそられるフレーズ。
以下、ネタばれしないように書いていきます。


読み始めると、まあ、ふつうの青春恋愛小説だ。
しかし、読み進めるにつれ、何か違和感がつきまとう。

時代設定は、1980年代後半。
まだ、携帯電話は普及しておらず、
公衆電話のテレカを使っていた。

そんな時代の恋愛、および遠距離恋愛。
そこから、小さな悲劇がはじまる。

最後の2行は唐突にきた。
はあ? わからない。

そう、わからないから、ページを改めて繰ってみる。
しばらくかかって、わかった。
ああ、そういうことなのか!
絶対最後の2行を先に読んではいけない。

帯には「必ず二回読みたくなる小説」と
書いてあるが、うそじゃなかった。
というか、二回読まざるを得なくなる。


東野圭吾の『どちらかが彼女を殺した』
(講談社文庫)も、そうだった。
最後まで、犯人が明かされないまま読者は放り出される。
読者はもう一度、ページを繰り直す。

そして、最初は読み流してしまった、
その決定的な1行を発見するのである。

これも、傑作だったなあ!

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2012.05.01

9月はほうき星が流れる時

締め切り直前は、ハイテンションにしないと
乗りきれない。

こんなに毎日日記をつけるのは、
気分転換もあるけど、ハイテンションになっているから、
というのもある。
いつの間にか、体がそんな風になっているのだ。


●加藤和彦の名曲3

 加藤さんには生前一度取材でお会いした。
 そのとき、ある質問をしようかどうしようか迷っていた。
 結局やめておいた。
 そして、永遠に答えは聞けなくなった……。

★「不思議な日」作詩/松山猛

 加藤さんが松山猛とスタンリー・クレイマー監督『渚にて』を
 観終わったとき、つくった曲だという。
 この映画は核兵器で人類がほぼ滅亡したという舞台設定で、
 そういう背景をもとにつくった曲だと思うと「不思議」に感動する。

 この曲が収録されていたのは『スーパー・ガス』というアルバムだが、
 3番目の歌詞が、本来は「星から星へ 旅を続ける」
 とあるべきところが、「星から星へ すがたを変える」となっている。
 これは2番目の「天使や鳥に すがたを変える」とかぶっているのだ。

 その後、再収録されたベスト盤などでもこのままだ。
 なぜなのか? 誰も気づかなかったのか? 何か狙いがあるのか?
 取材の時、それを聞いてみたかったのだが、失礼かと思い、
 やめておいた。

 永遠の謎が残った。


★「9月はほうき星が流れる時」作詩/松山猛

 「不思議な日」が春・夏・秋・冬を歌っているのに対し、
 この曲は、1月から12月までをひと月ずつ歌っている。
 いま聞くと、ちょっと気恥ずかしい感じがするけど、佳曲だと思う。


★「シンガプーラ」作詩/安井かずみ

 加藤さんが最も充実していたであろうころの曲。
 フォークルもサディスティック・ミカ・バンドもいいけれど、
 なぜか、ソロのときがいちばん好きだ。

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