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2012.05.10

にんげんだもの???

私の先輩ライターにNさんという人がいました。

あるとき、このNさんが、私の文章を読んで、「もっと、自分の言葉で書けよ」と言ったことがあります。
でました! 私、「自分の言葉で書け」なんていう人は絶対信用しないのです。なぜなのかは、書きだすと長くなるので省略します。

「君の文章を読んでると、道端に吐かれたタンを見たような気がする!」。
まあ、どう感じようが勝手です。しかし、次の一言は噴飯ものでした。
「たとえば、相田みつをのような文章を書けよ」。
よりによって、私に向かって相田みつをですよ!


後日、私やNさんがお世話になっていた編プロの社長さんが亡くなったときのことです。
火葬場からお寺に向かうご親族の車を、皆でしんみり見送っていました。すると、後ろで変な気配がしました。
「行くな~、行くなよ~」。なんとNさんが、床に這いつくばって車の方に手を伸ばし、叫び始めたのです。これは比喩でもなんでもなくて、ほんとに腹ばいになっていたのですよ。

まわりの人間は対応に困って、見て見ぬふりをしていました。
その後もさらにNさんはヒートアップ。泣き叫ぶ声はどんどん大きくなり、足をバタつかせています。

このとき、ふいに相田みつをの名が浮かんできました。
N先輩、きっとあなたは、こういうふうに皆に訊いてほしかったのではないですか。そして、こう答えたかったんですよね。
「Nさん、だいじょうぶですか? どうしたんですか?」
「だって……、だって……、にんげんだもの……」 

終わり。

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