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2012.06.30

寺山修司と生きて

仕事のため、闘病記ばかり読んでいる。
正直、読んでいてつらくなる本も多い。
しかし、きっと、いつかは自分の
たどる道でもあるのだ。


●『寺山修司と生きて』
  田中未知(新書館)

寺山の死まで16年間寄り添って、万事サポート
してきた田中未知が、寺山死後20年以上たって
ようやく綴った追悼記だ。

著者は、寺山のマネージャーだけでなく、
作曲、劇の制作、舞台照明でも、
たぐいまれな才能を見せた。

その著者による、寺山や天井桟敷の、
裏話は怪しく興味が尽きない。


寺山の死後、その才能を否定するいくつかの
本がでた。
『虚人 寺山修司伝』田澤拓也(文藝春秋)
などがそうである。

彼らは鬼の首をとったかのように、
寺山の模倣癖、虚言癖をあげつらう。
たしかに、寺山の短歌には、ほかの現代句からの
模倣が認められる。


これらに対し、著者は反撃を開始する。
これまで、20年間鬱積していた思いを
吐き出すように。


読者にとって、読んでいてつらいのは、
寺山の母「はつ」の異常ぶり。
また、誤診のために、寺山に早期の死をもたらした
N医師の無神経、というか人格を疑う言動だ。

とくに、お母さんはすごい!
著者が一部を引き取らなければ、
寺山の蔵書は、あやうく、すべて散逸するところだった。


著者は、寺山の死後の騒動が収まると、
沈黙を守り、
日本を去ってオランダに移住した。

そして、満を持して書き上げたのが本書だ。
著者の寺山への思いが、読者の心を締め付ける。


寺山修司
「未知、きみは固有名詞じゃない。ぼくとの共通名詞
である。一緒につくった一つの存在です」

田中未知
「私の職業もまた寺山修司です」

カッコよすぎるぜ。

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2012.06.26

贖罪の奏鳴曲(ソナタ)

仕事しなければならなかったのに、
読んでしまった。


●『贖罪の奏鳴曲』
  中山七里(講談社)

「しょくざいのソナタ」
「なかやましちり」
です。


こ、これは、もしかして、大変な傑作か?

でも、まだ、どう評価しようか迷っている。

少なくとも、この1~2年では、
私的には最高の問題作だ。


意表をつく発端。
主人公のあまりにも意外な出自。
反感と共感。
法廷シーンでのカタルシス。
ラストのどんでんがえし。
ふいに襲う感動。
そして、深い問題提起。
圧倒的だ。


しかし、途中で、読むのをやめようかと
思ったのも事実だ。
こんな主人公に共感することはできない。
ところが……!


主人公は、悪徳弁護士、御子柴礼司(みこしばれいじ)。
物語は、なんと、この主人公が死体の処分を
するところからはじまる。
すぐに、疑いを抱いた敏腕刑事につきまとわれる。

一方、主人公は勝ち目のない裁判の国選弁護人を
引き受ける。

読者は、見事に予想を裏切られていく。


3分の2ぐらいまでのところで、
はたして、この小説、どうやって
収束させるつもりなのか、
作者の仕掛けがまったく読めなくなった。


読者は、混乱と困惑と懇情に翻弄されて、
最後のクライマックスに導かれる。

「許される」ということはどういうことなのか。
問題作であることは間違いない。

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2012.06.23

ねらわれた少女

いまやってる仕事は、
100アイテム書かなければならないので、
スピードが要求される。

資料集めと、原稿書きが同時進行。
とりあえず、100アイテム分の
資料が必要だ。

幸いなことに、半分以上は、
自分の蔵書を使える。

これだから、本を簡単に処分する
ことはできないのだ。


それにしても、去年は、なぜ、あんなに
ムキになって本を処分しようとしたのか。
けっこう、精神的に弱っていたからかな。
はやくも処分したのを後悔する
本が続々とでてきた。

もう、絶対、本の「断捨離」なんかに
惑わされない。
「断捨離」が有効なのは、どうでもいい本を
たくさんもっている人だけだろう。


●80年代アイドルポップベスト3

『BOMB presents
 永遠の´80お宝アイドル大集合!』
 (Sony Music House Inc.)

CD2枚組、アイドル30人の30曲収録。
いやあ、けっこうクオリティ高い。
歌のうまいアイドルも多かったのだなあ。
いまに比べれば(笑)。


★「ねらわれた少女」真鍋ちえみ
 作詞・阿久悠/作編曲・細野晴臣

豪華作詞・作曲陣によるテクノ・アイドル・ポップ。
一度聴くと、耳から離れない超ポップな曲。
北原佐和子、三井比佐子とともに、
アイドルグループ「パンジー」のメンバーだった。


★「微熱かナ」伊藤麻衣子
 作詞・売野雅勇/作曲・来生たかお

現在の表記は、いとうまい子。
本人は歌はあまり好きではなかったよう。
このアルバムには入っていないが、
「わたしの胸に」「最後の春休み」
も名曲だ。


★「追いかけて夏」小沢なつき
 作詞・秋元康/作編曲・馬飼野康二

秋元さんらしい、アイドルポップの王道。
ずっと、浜田雅功の奥さんだと勘違いしていたが、
あっちは、小川菜摘(元オナッターズ)だった。
全然名前違うのに(笑)。

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2012.06.21

墓場まで何マイル?

●『墓場まで何マイル?』
  寺山修司(角川春樹事務所)


図書館で借りた資料のうちの1冊。
寺山修司、最晩年のエッセイ、対談、
インタビューが収められている。


私は20代初期に、
劇団天井桟敷の『奴婢訓』を観て以来、
寺山修司の活動には注目してきた。

1度取材もした。
私が渋谷に住んでいたころは、
寺山修司の家も近くにあり、
よく、道で会った。
寺山が覗きをしたとしてつかまったアパートも、
実はその近くにあった。
(事件そのものはでっちあげられたものだった)。


寺山こそが、真の前衛だった。
「青森県のせむし男」「毛皮のマリー」
「血は立ったまま眠っている」
「地球空洞説」「疫病流行記」
などなど、戯曲のタイトルだけで、
背中をざわめかされる。


この本で読みたかったのは、
遺稿となった、この詩だ。

「懐かしのわが家」

昭和十年十二月十日に
ぼくは不完全な死体として生まれ、
何十年かゝって
完全な死体となるのである
(以下略)

黙祷。

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2012.06.20

狂風世界

資料を借りに図書館に行く。
隣の窓口で、おっさんがお姉さんに、
ネチネチいつまでも何か文句を言っている。
お姉さんは何度も頭を下げている。

何があったのか知らないが、
「あんた、いい加減にしなよ」
と言ってやろうかと思って、やめた。
こじれるだけだ。

口答えのできない相手に居丈高になる。
最低の野郎だ。
だいたい、タダでCD借りるのに、
なに威張ってるんだ(嘲笑)。


台風4号の影響で風が強い。


●『狂風世界』J・G・バラード(創元推理文庫)

『結晶世界』『沈んだ世界』『燃える世界』
(いずれも創元推理文庫)
とともに、「破滅四部作」と呼ばれる、
バラードの代表作だ。

J・G・バラードには高校生の頃かぶれていた。
あのころ、妙に「破滅」というキーワードに
惹かれていて、破滅ものを好んでテーマにする
バラード作品に夢中になった。

といいながら、実は、四部作のうち、
この『狂風世界』と『燃える世界』は未読(笑)。
楽しみにとっておくうちに読み逃してしまったのだ。

この台風をきっかけに、読破してみるか。

それにしても、あの頃なぜ、「破滅」になど
惹かれたのか?
まっとうな社会人生活をする自信がなくて、
破滅的な人生を送ることを予期していたのかな(笑)。

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2012.06.18

Chinese Posters

間断なく襲ってくる眠気。
現在、朝の5時に寝て、9時には起き、
昼間のうちに2回仮眠、というような
生活を送っている。

妻は、毎日、夜食を作ってくれている。
それを楽しみに仕事に励む。

ああ、でも、
もう少し、効率よく仕事ができないものか?


●『Chinese Posters』秋山孝(朝日新聞出版)

著者は、私の馴染みの飲み屋にくる常連さん。
中国の近代史をポスターによって辿るという
壮大な試みだ。

掲載されたポスターは168点に及ぶ。
いやあ、日本とはまったくの異世界。
図版を眺めているだけで時を忘れる。

しかしながら、文化大革命時に、
毛沢東の肖像画が22億枚も印刷された
という話には、空恐ろしさも感じる。

異色の中国史であり、独創的な中国美術史だ。


●『遺品整理屋は見た!』吉田太一(扶桑社)

孤独死を迎えた人の住居には、当然ながら、
遺品が残る。
その整理を専門にする著者の体験談。

孤独死、ということは、誰にも看取られずに
亡くなったということだ。
発見が遅れることもある。
その結果……。

また、著者のところに持ち込まれるのは、
尋常ではないケースが多い。
つまり、ふつうの死に方ではない場合も多いのだ。

全46話が掲載されているが、それぞれ短いので、
詳細は記されていない。
でも、それで、十分な感じがする。

今後、孤独死は、ますます増えるだろう。
私たちだって、例外ではない。
こういう本を読んで、死に備えるというのも
悪くはない。

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2012.06.17

匂いのエロティシズム

先日、飲みに行った店の馴染みのなかに、
韓国の人がいて、
「日本と韓国はキンシンソーカンなのよ」
と断言。
そ、それ、「近親憎悪」じゃないの?
大笑いしてしまった。
それともギャグだったのかな。


●『匂いのエロティシズム』
 鈴木隆(集英社新書)

人は、なぜ匂いで、やらしい気持ちに
なったりするのか?


まず、意外だったのは、
香料は、ほとんどが植物由来のもので、
動物由来のものは、ジャコウ、リュウゼンコウ、
レイビョウコウ、カストリウムの
4種類しかないということだ。

日本では、江戸時代に、「惚(ほれ)線香」
なるものがあった。
これに火をつけると、催淫効果があったという。


フェロモンとワキガの関係については、
動物行動学者のD・M・ストッダートの説が
紹介されている。

現在、はっきりしたヒトの性フェロモンは、
見つかっていない。
ストッダートは、かつては、
ヒトにも性器からの性フェロモンがあったが、
それを感じる能力が退化したと考える。
(詳細は割愛)。

その代わりにクローズアップされたのが
脇の下の匂いだ。

「なぜ脇の下が匂いの魅力の引越し先に
選ばれたかと言えば、ふだんは他人の目から
隠しておける特異な位置にあるという
理由による」

「ところが、性交に際して抱き合うと
腕は持ち上げられ、あらわになった脇の下
からは、体温の上昇とともにここぞとばかりに
腋臭が匂いたつはずである」

腋臭は、性フェロモンのように性行為を催させる
ものではなく、興奮を加速させる役目を
もっているらしい。

だとすると、昨今のデオドラント文化は
どうなってしまうのだろう。


ほかに、西洋のダンスは、お互い、脇の下の
匂いをよくかげるポーズが積極的に導入
されてきたという説も紹介されている。
フォークダンスもそうだと。
そ、そうなのかなあ?

そのほか、下着フェチやラバーフェチに関する
興味深い話にも触れられているが省略。

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2012.06.14

馬鹿について

肌寒い微妙な気温のせいか、元気がでない。

景気づけに「燃えよドラゴン」を観る。
アクションシーンは名シーンばかりなのだけれど、
全体に比べて時間が少なすぎるというか……。

その点、「怒りの鉄拳」のほうが格闘シーンの
割合は大きいかもしれない。
日本人は悪者だけれど。


『馬鹿について 人間‐この愚かなるもの』
 ホルスト・ガイヤー著/満田久敏・泰井俊三訳
(創元社)

第1部 知能が低すぎる馬鹿
第2部 知能が正常な馬鹿
第3部 知能が高すぎる馬鹿


著者はドイツの精神科医。
文字通り、「馬鹿」についてのあけすけな考察。

こんなこと書いていいのか?


大衆というのは、なぜ馬鹿なのか。

「この激しい生存競争にもまれながら、大思想家に
私淑して、哲学的な根本理念を本当に身につける
ひまが一体誰にあるだろうか? 夕方になると、
ホーマーやその他の偉大な世界的詩人の詩集を
手にする人が今でもあるだろうか? 享楽活動、
いわゆる宴会や社用に追われてしまうぐらいが
おちである。」

まったくその通りです、というしかない。
どうでもいいけど、
ドイツの人も、仕事終わりには宴会するのか?
ネクタイをハチマキにして、タコ踊りする
ドイツ人て想像できないな。


「そうして人民の声の数は算(かぞ)えるが、
その質を秤(はか)らない民主主義、つまりどんな
馬鹿者でも、禁治産者でさえなければ、
一人前と認める民主主義は一体どうなるのか?」

それは、いわない約束でしょ(笑)。
まったく、その通りだと思うけど(笑)。


こんな調子で、まったくまっとうな意見なのだが、
あまり大っぴらにはいえないことをズケズケと
言っている一種痛快な本だ。


最後に、もう一つ気に入った、自戒も込めての引用。

「本当の知能はないくせに、高尚な言葉がむやみと
まき散らせる能力は、浅薄でおしゃべりの社交界で
活躍する薄馬鹿の一ばんの特徴で、精神病学者の
ブロイラーは、これを「比例痴呆」と呼んだ。」


それにしても、この本、1958年初版だから
日本でも出せたんだよなあ。

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2012.06.13

破滅の日

SFの重要なテーマの一つに、「破滅もの」がある。

人類や地球が、これまでSFのなかで、
どれくらい破滅させられてきたかわからない。

そのような破滅ものの傑作短編を集めたのが、

『破滅の日』福島正実編(講談社文庫)だ。


元々は、「海外SF傑作選」というシリーズの
一つ。

この傑作選には、
『時と次元の彼方から』(異次元もの)
『未来ショック』(未来もの)
『千億の世界』(宇宙人もの)
など、SFの基本的テーマのアンソロジーが
そろっていた。
(現在、いずれも絶版)


『破滅の日』には、

「太陽系最後の日」アーサー・C・クラーク
「ロト」ウォード・ムーア
「大当たりの年」ロバート・A・ハインライン
「終りの日」リチャード・マティスン
「夏は終りぬ」アルフレッド・コッペル
「ひる」ロバート・シェクリイ
「豚の飼育と交配について」レックス・ジャトコ

の7編が収録されている。


太陽の爆発、第三次世界大戦、他天体の衝突……、
迫り来る破滅と人類の戦い、あるいは諦め、自暴自棄、
などの様子が想像力を駆使して描かれる。

短編ながら、SFの醍醐味を味わわせてくれる、
名作揃いだ。

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2012.06.12

ニッポン犯罪狂時代

大阪で嫌な事件があった。

狂った奴が、全然無関係な人を2人も
刺し殺したのだ。

「死刑になりたかった」のだという。


こういう奴がでると、死刑反対論者が
大喜びする。

「そら見ろ、死刑なんて犯罪抑止力がないのだ」

この連中は、こんなレアなケースばかり挙げて、
死刑反対の根拠にする。


こんな輩に対して、犯罪被害者、遺族、それらの支援者が
かならず投げかける問いがある。

「あなたやあなたの家族が突然殺されたら、
 死刑反対などと言えるのか」と。

彼らは、考えようともしない。
自分たちが被害者になったと想像する力がない。
答えようともしない。


あるいは、被害者でも死刑反対をしている人がいる、
と、これまたレアなケースを挙げて反論する。


こいつらはイデオロギーの奴隷になっているのだ。
犯罪者は国家に弾圧されている。
私たちは国家権力が行う人殺しを断じて許さない。
死刑ほど残酷な殺人はない。

死刑が残酷なら、馬乗りになって何度も人を刺すのは
残酷ではないのか。

まだ言いたいことはあるが、これくらいにしておこう。


『ニッポン犯罪狂時代』北芝健(扶桑社)

内容はあえて紹介しない。
私の主張するのと同じことが書いてある。

私は、読書ジャンルの1つに犯罪ものがあるのだが、
そのうちの1冊だ。


もちろん、ミステリーにも、
伊坂幸太郎『重力ピエロ』(新潮文庫)、
東野圭吾『さまよう刃』(角川文庫)など、
犯罪問題を深く考えさせられる傑作もある。

今後、そんなジャンルにも触れていきたい。

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2012.06.11

死ぬときに人はどうなる10の質問

『死ぬときに人はどうなる10の質問』
 大津秀一(致知出版社)

本書は、ベストセラーとなった、
『死ぬときに後悔すること25』(致知出版社)
の続編。

著者は、緩和医療医で、これまでに1000人の
死を見届けてきた。


1 死を語るあなたは何者ですか?
2 死ぬときに人はどうなりますか?
3 人はどんな風に思って死んでいくのでしょうか?
4 人は死期を悟るのでしょうか?
5 健康に気をつかっていれば死ににくいですか?
6 なぜ死を見つめることが必要なのですか?
7 死後の世界について言い切らないのはなぜですか?
8 孤独死は不幸でしょうか?
9 死とは不幸ですか? 死ななければ幸福ですか?
10 死をも左右する力を手に入れた人間は、
  本当に偉いのでしょうか?

という10の問いに、ときに実例を挙げながら答えてゆく。


たとえば、
5の「健康に気をつかっていれば死ににくいですか?」
という問いには、
「そんなことはありません。残念ながら」
と明確な、身もふたもない答が返ってくる。

健康という幻想にまやかされてはいけないのだ。


3.11以降、人生観が変わった人が多いという。
私たちが生きている地盤というのは、
けっして万全のものではないのだ。

私も、40歳過ぎてから、「死」が頭をよぎらない
日はない。

父母の寿命からいうと、私の残りの人生も、
生きられて、せいぜい、あと十数年だ。

そろそろ余生の計画立てておこう。
まあ、そんなのムダだと言われればそうだろうけど(笑)。

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2012.06.09

ユートピア 1

人は、なぜ、ユートピアなどというものを
夢想してしまうのだろうか。


かつて、ユートピア関係の書物を、
まとめて読んでいたことがある。
(一部未読)

『ユートピア』トマス・モア(岩波文庫)
『ユートピアだより』ウィリアム・モリス(岩波文庫)
『太陽の都』カムパネルラ(岩波文庫)
「ニューアトランティス」ベーコン
(『世界の大思想6 ベーコン』河出書房新社 所収)
『ユートピアの歴史』ジャン・セルヴィエ(筑摩叢書)
『ユートピアの幻想』川端香男里(講談社学術文庫)
『歴史とユートピア』E・M・シオラン(紀伊國屋書店)
『桃花源とユートピア』杉田英明編(平凡社)

いつか、ユートピア論をまとめてみたい。
こういうのは、まとめてノートをとっておかないと
ダメだな。

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2012.06.07

十月はたそがれの国

6月5日、SF界の巨匠レイ・ブラッドベリが、
たそがれの国に帰った。

中学生のときに出会った、
『十月はたそがれの国』(創元推理文庫)。
いっぺんに読むのがもったいなくて、
1編1編、大切に読んだ。

そして、
『何かが道をやってくる』(創元推理文庫)
に、してやられ、
完全にブラッドベリアンになった。

当時、ポケミスに入っていた、
『火星年代記』『刺青の男』『華氏四五一度」
などは、注文しても品切れだった。

それだけに、なお、恋憧れた。

私にとってのブラッドベリは、SF作家というよりも、
『たそがれの国』や『火星年代記』や
『刺青の男』などで、時折見せる、身も凍るホラー小説
の作者だった。

ただ、ブラッドベリに熱中していたのは、
ほんの少しの間で、
その後、すぐJ・G・バラードなどの、
ニューウェーブSFに関心が移った。

現在読み直してみると、短編には、叙情過多、稚拙さ
などが感じられる作品も多い。

だが、それもそのはず、
ブラッドベリは永遠の子どもだったのだから。

取り急ぎ、訃報を聞いての走り書きである。

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2012.06.05

たんぽぽ娘・もし万一……

さえない天気だ。
これからは1日も無駄にできない。


●夫婦愛をテーマにした珠玉SF3

結婚してから、はじめて良さがわかった
SFがある。
いずれも、タイムトラベルが関連している。

あ、ネタバレします。


★「たんぽぽ娘」ロバート・F・ヤング
 『年刊SF傑作選2』(創元推理文庫)所収

独身時代に読んだときには、何の感銘もなくて、忘れていた。
結婚した後、ふとした時に読み直したら、
涙で字が読めなくなった。

妻の長期留守中、草原で出会った、たんぽぽ色の髪の娘。
彼女はタイムマシンを使って未来から来ていた。
主人公は、この娘を愛し始めるが、別れの日が来た。

傷心した様子の彼の姿を見て、妻は心を痛めた。

ある日、妻の外出中に偶然、妻のケースを落としてしまい、
鍵が壊れて中身がでてしまった。
それこそ、あの時、たんぽぽ娘が着ていたドレスだった。

主人公は、20年前、妻が自分のオフィスに、
秘書の面接に来た時の、おずおずとした姿を思い出した。

彼女は一世一代の賭けにでたのだ。
40歳のとき、自分を愛してくれた男が、
20歳でも愛してくれるかどうか?

主人公は、たまらなくなって、雨の中、
妻が乗って帰るバスの停留所目指して走った。
バスから、いまでは少し濃くなった
たんぽぽ色の髪をもつ女性が降りてきた……。


★「もし万一……」アイザック・アシモフ
 『サリーはわが恋人』(早川文庫)所収

ある夫婦が汽車に乗ると、前の席に黒い箱を
もった男が座った。
もし万一、あのとき、二人が出会っていなければ
それからどうなったかを知ることができるのだという。

画面には、夫が別の女性と結婚したストーリーが、
映し出された。

さて、それから最終的にどうなったか?
想像できますか?


★『リプレイ』ケン・グリムウッド(新潮文庫)

ささいなことで妻と喧嘩した43歳の主人公が、
あっけなく急死してしまう。
気がつくと自分は18歳の学生に戻っていた。

記憶はそのままに、体だけ学生になったのである。
彼にとって、この先の未来は、すべて既知のことだ。
たとえば、株や競馬の結果の記憶も。

若いときの妻に会いにいくと、拒絶されてしまい、
ついに、付き合うことはできなかった。
彼は再び、43歳で急死する。

すると、また18の自分に戻っていた。

主人公が、自分の妻と再び会うことはもうできないのか。
気まずくなってしまった関係はもう、
元に戻すことはできないのだろうか……。

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2012.06.04

葉桜の季節に君を想うということ

仕事は一応、着々とこなしている。
体調を管理するのが大変だ。


『葉桜の季節に君を想うということ』
 歌野晶午(文春文庫)

2004年『このミス』第1位の本。

騙されることの至福。

このとき、10位以内に、
伊坂幸太郎『重力ピエロ』、
横山秀夫『第三の時効』、『クライマーズ・ハイ』、
桐野夏生『グロテスク』、
などの力作、問題作が並んでいる。
それらを抑えての堂々1位だ。


最後まで読むと、
最初、極彩色だった世界が、いつの間にか、
単色に塗り替えられている。

えっ、いつの間に?

2回目に読むと、最初から単色にしか見えない。
不思議だ。


精力絶倫(笑)の主人公が、
地下鉄で自殺しようとしていた
女性を救う。

その女性との恋愛進行形、
及び悪質商法会社の極秘調査。

そして、あれれれ、という驚きの結末。
ミステリーには、2度と使えない手というものがある。
こんな手が、まだあったのか。
よく、見つけたなあ。

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2012.06.02

立ち飲み発想法

昨日(金曜)は、朝の7時まで仕事をやり、
眼の疲れが限度になり、2時間寝て、起きて、
11時にようやく仕上げた。

午後も外出しなくてはならず、 夕方、
徹夜明けハイになったまま飲みに出かけた。


最近行きつけなのは、立ち飲み屋で、
もう、5年以上のつきあいになる。
お客もすっかり馴染みだらけになった。

以前は、よくこの店でビールを飲みながら、
メモ用紙に思いつき企画案を、
ガンガン書いていくという訓練(?)をしていた。

発想というのは、いわば、これまでの知識の中から、
意外な組み合わせをつくるということだ。

アルコールは、隠れていた知識の引き出しの
カギを開けやすくしてくれる。
高速で引き出しの開け閉めをしていると、
発想が生まれる。

このとき、座っているよりなぜか立っていたほうがいい。
座っている時の安定感より、
立つという不安定な姿勢のほうが、集中力が出る。


それと、歩き飲み発想法もある。
夜仕事をしない時は、夕方の散歩で飲みながら歩く。

散歩コース途中にあるサンクスに寄って、
この店の三姉妹のなかの誰かのレジで、
缶チューハイを買う。
もちろん、本当の姉妹ではなく、
私が勝手に、三姉妹といっているだけだ。

歩くリズムと、移り変わる視覚変化が、
脳のふだん使わないところを刺激して、
問題解決できることがある。


まあ、立ち飲み発想法も、歩き飲み発想法も、
アル中になりやすいのが難だ(笑)。

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