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2012.06.30

寺山修司と生きて

仕事のため、闘病記ばかり読んでいる。
正直、読んでいてつらくなる本も多い。
しかし、きっと、いつかは自分の
たどる道でもあるのだ。


●『寺山修司と生きて』
  田中未知(新書館)

寺山の死まで16年間寄り添って、万事サポート
してきた田中未知が、寺山死後20年以上たって
ようやく綴った追悼記だ。

著者は、寺山のマネージャーだけでなく、
作曲、劇の制作、舞台照明でも、
たぐいまれな才能を見せた。

その著者による、寺山や天井桟敷の、
裏話は怪しく興味が尽きない。


寺山の死後、その才能を否定するいくつかの
本がでた。
『虚人 寺山修司伝』田澤拓也(文藝春秋)
などがそうである。

彼らは鬼の首をとったかのように、
寺山の模倣癖、虚言癖をあげつらう。
たしかに、寺山の短歌には、ほかの現代句からの
模倣が認められる。


これらに対し、著者は反撃を開始する。
これまで、20年間鬱積していた思いを
吐き出すように。


読者にとって、読んでいてつらいのは、
寺山の母「はつ」の異常ぶり。
また、誤診のために、寺山に早期の死をもたらした
N医師の無神経、というか人格を疑う言動だ。

とくに、お母さんはすごい!
著者が一部を引き取らなければ、
寺山の蔵書は、あやうく、すべて散逸するところだった。


著者は、寺山の死後の騒動が収まると、
沈黙を守り、
日本を去ってオランダに移住した。

そして、満を持して書き上げたのが本書だ。
著者の寺山への思いが、読者の心を締め付ける。


寺山修司
「未知、きみは固有名詞じゃない。ぼくとの共通名詞
である。一緒につくった一つの存在です」

田中未知
「私の職業もまた寺山修司です」

カッコよすぎるぜ。

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