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2012.08.30

シェイクスピアの鳥類学

ついに、締切を切られてしまった。
9月10日までに、どうしてもこの仕事を
終わらせなければならなくなった。

超集中だ。

家の外に出る時間を制限し、
散歩も自粛。
もちろん酒断ちも。

資料を読んでも、ちょっと、内容がどうかと
いうときは、早めに「ボツ」にする。
無駄な時間を少しでも省くため。

こんなときでも、できるだけ、仕事に関係ない本
に目を通しておきたい。


●『シェイクスピアの鳥類学』
  ジェイムズ・E・ハーティング(博品社)

博品社の「博物学ドキュメント」のシリーズの1冊。
シェイクスピアの作品には、鳥の記述がかなり多く、
鳥類に関するそうとうな知識があったようだ。

本書ではそれを詳細に分析する。
まあ、読んでもまったく何の役にも立ちそうもない。

いいねえ。

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2012.08.28

老後の読書について

資料があまりに多すぎて、
仕事以外の本を読む時間がない。


『鏡花全集』『露伴全集』などは、
老後の楽しみにとっておこう
と考えていたが、
この何年かで判明したのは、
そのような老後などないということだ。

そもそも、老後の読書は、現在と同じ
体のコンディションで読書するのが
前提となっている。

だけど、それは、ムリムリ。
いまだって、目はしょぼしょぼだし、
長編を読む持久力も衰えている。

今後、その傾向はますます強まっていく。
すると、老後に読もうと思っていた本は、
大幅に前倒しして、いまから読んでいかないと、
死ぬまでに間に合わないことになる。


かてて加えて、子どものときに読んでいるのに、
まったく記憶に残っていない名作もある。
恥ずかしながら、たとえば『罪と罰』『赤と黒』
なんてのがそうだ。
いまさらだけど、読んでおかなければ。

というわけで、現在、いかに本を読む時間を
つくるかが最大のテーマになっている。

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2012.08.27

あんときの悪夢

韓国の大統領やマスコミは狂っているが、
一般庶民の方々は、それに煽られていないことを
願う。

選挙後、子分200人も引き連れて、
中国に「朝貢」。

軍備をもたなければどこも攻めてこないという
驚くべき妄想の持ち主、
福○瑞○が入閣した悪夢のような光景。

わざわざ韓国に反日運動の支援にいくような
女性議員を国家公安委員長に。

なぜか死刑反対論者ばかり
法務大臣に指名(当時)。

反権力をうたう連中が権力を握ると
どれくらい権力的になるか、
国民に知らしめた醜悪な「仕分け」。


この党、自国領土が侵害されようとしているとき、
果たして、どれくらいの働きをしてくれるやら。

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2012.08.26

夏の庭

ちょっと、ショック。
こんな名作を、まだ読んでいなかったとは。
これは、できれば子どものときに読んでおきたい物語だ。
(もっとも私の子どものときにはまだなかったが)


●『夏の庭 The Friends』湯本香樹実(新潮文庫)

この物語は2つの友情物語だ。
少年どうしの友情と、もう一つは少年たちと老人の友情。

少年の友情と「死」というと、スティーヴン・キングの
『スタンド・バイ・ミー』が、思い浮かぶが、
「死体を見に行く」という設定が気色悪くて
私にはイマイチだった。

こちらは、小学校6年の友達3人が、
人生残り少なそうな老人の「死」を見ようというのだが、
少年たちと老人のユーモラスなやりとりで、
さわやかな印象が残る。

どうも、私は、友情テーマというのに滅法弱いのだ。
それがWで襲ってくるのだからたまらない。

話は脇道にそれるが、「夏の庭」というと、
三島由紀夫の『豊饒の海』のあのラストも思い出す。

とやら何やらで、一気読みしてしまった。
3人で植えた、老人の家の夏の庭一面のコスモスが、
目に焼きついて離れない。

それは、最初から別離の予感を秘めた花だった。
ラスト、清爽なそれぞれの別れ。
せつない……。

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2012.08.25

宇宙人ポール

妻の新しいパソコンがブルーレイ対応なので、
さっそくブルーレイ版を借りてきた。
食卓で、久しぶりに二人で映画鑑賞。


●『宇宙人ポール』グレッグ・モットーラ監督
 サイモン・ペッグ、ニック・フロストほか

超B級映画なのかと思っていたら、
とんでもなかった。

「未知との遭遇」「E.T」ほか
エイリアンものへのオマージュであり、
性格が悪く(本当はいいのだが)、下品で、年寄りの
宇宙人ポールの存在感が特異だ。

宇宙人オタクの2人がアメリカのUFO聖地を巡る
ロードムービーという体裁だが、
途中、乗り込んできたのは、生意気な宇宙人。
そして、楽しいはずの旅は、必死の逃避行になる。

ファンダメンタリストの娘が、ポールから頭に
「真理」を注入されて、卑猥な言葉を連発するのがおかしい。

最後には、サプライズで、あの大物女優が登場。
宇宙人ものといえば、この人だよねえ(笑)。

初のブルーレイ映画は楽しかった。
画像はきれいだったけど、ノートパソコンの
モニターだから、DVDとどこまで違うか
よくわからんかった。

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2012.08.24

クラフトワーク

出版エージェントのOさんから、
新しい企画書の依頼を受け、
むりやり、1本ひねり出して、送る。
なんとか、OKみたい。
では、営業よろしくお願いします。
新しい企画も出しておかなければね。

企画書を書いている間、
久しぶりにクラフトワークのCDをかける。
快適。アウトバーンをドライブしている気分。
このバンドが後世に残した影響ははかりしれない。
日本のテクノポップだって、捨てたもんじゃなかった。
テクノアイドル・真鍋ちえみの復権を!

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2012.08.22

愛と死をみつめて

映画や、青山和子の歌もヒットしたけれど、
子どもの私には、顔面に巣食う軟骨肉腫という病気は
衝撃が大きすぎた。

●『愛と死をみつめて』大島みち子/河野実
 (大和書房)

ようやく、読むことができた。
ついでに、映画のほうも観た。

浜田光夫、吉永小百合主演。
いや~、この吉永小百合の美麗なこと。
世にサユリストという人種が多いのも、
なるほどと思わせる説得力。

しかも、ヒロインは、ほとんどのとき、
顔半分が眼帯か包帯で隠れている。
その残りの半分だけでも、これほど魅惑なのだ。

父親の笠智衆が、またいいねえ。
演技の上手い下手とか、そういうの超越してるね。
この人にいちばん泣かされた。

とりあえず、死ぬまでに観ておいてよかった。

女の子のおでこをチョンとつついて、
「こいつ~」とかいうの、
この頃からはやっていたのだろうか。

そういう恥ずかしいシーンもあるけれど、
ああ、純愛よ、永遠なれ!

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2012.08.20

一休 その破戒と風狂

M書房さんへ、赤入れしたゲラを、
PDFファイルにして送付。
これで責了。ほぼ終わり。
ふ~。

1日5冊くらいのペースで、
資料を読まないと間に合わない。
図書館をフル活用。

●『一休 その破戒と風狂』
  栗田勇(祥伝社)

著者の名前に覚えがあると思ったら、
『ロートレアモン全集』(人文書院)
の訳者だった。

懐かしき、「マルドロールの歌」。

その著者が書いた一休禅師の評伝。
さすがに分析が精緻だし、文章の格が違う。

一休さんといえば、とんちの一休さん
として有名だが、
高踏な破戒僧であり、生臭で、女色男色
なんでもござれだったのは、知る人ぞ知る。

それは、自身の詩集『狂雲集』で、
あけすけにされている。

まさしく、風狂の人。
私も、風狂の人と呼ばれるような生き方をしたかった、
かも。

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2012.08.18

空海『秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)』

午前9時にようやく寝られたが、
突然の雷雨。
あわてて窓を閉めた。

ただの歌手を「アーチスト」と
呼ぶようになったのはいつからだろう?
違和感を感じる。

仕事の資料で、空海の「秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)」
(『弘法大師 空海全集 第二巻』(筑摩書房)所収)
を読むことになる。

ところで、この変換ソフト(Baidu IME)、
「秘蔵宝鑰」も簡単に予想変換してきたぞ。
すごくないか?

「秘密曼荼羅十住心論」の入門編というか要約のようだ。
有名なこのフレーズは、「秘蔵宝鑰」の冒頭にある。

「生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く
 死に死に死に死んで死の終わりに冥(くら)し」

ちょっと、本腰を入れて取り組まんといかんな。

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2012.08.17

サークルゲーム

おおっ、ラジオから、バフィー・セントメリーの
「サークルゲーム」が流れてきた。
映画『いちご白書』のテーマ曲だ。

あの「「いちご白書」をもう一度」の
『いちご白書』である。
いまから思えば、学園闘争のダサい映画だったけど、
挿入歌に、CSNYの曲が入っていたりと、
音楽的には贅沢な映画だった。

現在、午前3時半。
まだ、仕事中。寝るわけにはいかない。
FM局のJ-WAVEでは、深夜の3時から6時まで、
音楽特集をやっていて、思わぬ懐かしのメロディーが
流れてきて、聴き入ってしまうことがある。

ちょっと一服(私は煙草を吸わないけど)。
もう、ひと頑張りだ。

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2012.08.15

昭和史の謎を追う

ようやくT社の仕事が加速してきた。
仕事頭に戻ってきたぞ。

さて、
私には韓国人の友人もいるし、
私の本の韓国の読者もいるから、
今回のような一部の者の動きは非常に残念だ。
李大統領、頭を冷やせ!

ついでだから、このことも改めて書いておこう。
これまで、この話をしようとして、何度、
「そんな話聞きたくなーい!」
と、拒絶されたことか。
絶交されたこともある。日本人に。
だが、言わざるを得ない。


「従軍慰安婦の強制連行」なんて、でっち上げだ!
あれは、吉田清治という一人の男の大嘘から始まった。
この男が、韓国女性を強制連行したと、嘘の告白をしたのだ。
すでに、秦郁彦氏らの韓国現地調査で、そんな事実はなかった
ことがはっきりしている。

とにかく、この男の言うこと、嘘ばかりなのだ。
判明しているのは、一度、下関の市議会議員選で、
共産党から立候補したことがある、ということくらいだ。


この男の大嘘を、市民(笑)活動家、一部の大手新聞、元社会党、社民党、
吉見義明などの反日学者が大々的に真実として喧伝したのである。

でっちあげがはっきりしたいまも、
この連中は、いまだに正式に撤回していない。
そればかりではなく、いまだに「慰安婦問題」に関する
活動を積極的にしている者までいる。


では、現在、元慰安婦と名乗っている人たちはなんなのか?
気の毒に、親戚に売り飛ばされた人たちだ。
この人たちの最初の「証言」でも、本人たちがそう述べている。
それが、いつの間にか、日本軍に連れ去られたと供述を変えているのだ。


一部の者(河野洋平も含む)のでっち上げによって、
馬鹿げたことに、
従軍慰安婦という虚構が世界的に真実として広まった。
そもそも、従軍慰安婦という言葉自体、
戦後の造語なのだ!


こんな事実を日本人の多くがいまだに知らない、
という現実に、愕然とするのである。

これこそ、
元日本兵に対する最大の冤罪事件ではないか!(怒)


参考資料
●『昭和史の謎を追う 上・下』秦郁彦(文春文庫)ほか

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2012.08.14

唯一者とその所有

今日はよく寝た。
このところ、平均睡眠時間が
4時間くらいしかなかったから。

蔵書整理していたとき、処分するかどうか迷った。
昔、夢中になっていた本。
あのころは、私も急進派だった(笑)。


●『唯一者とその所有 上・下』
 シュティルナー/片岡啓治訳(現代思潮社)

マルキシストに重要な影響を与えた書。
といっても、この書自体は、
アナーキズム、徹底的個人主義的傾向が強い。

「私の事項を、無の上に、私はすえた」
唯一者とは自分のこと。自分がすべてなのである。
ほかには関心がない。


シュティルナーにとっては、
宗教家、思想家などは、
「聖なるものを信じる不自由なエゴイスト」
であり、
「ひとつの理念のために生き、創造する」
理念に支配された坊主根性の持ち主だ。

人間とは、
「人間が人間にとって最高の存在である」
とき、はじめて自由となれる。


そして、もちろん、
「国家は労働の奴隷制のうえになりたっている」

では、国家をぶっつぶしてしまったらどうか。
「あるひとつの「支配」から自由になることは、
 別のものの「支配」にとってかわられるにすぎない」

シュティルナーの目から見れば、
「与えられた自由などは所詮自由ではない」
自らの力で克ちえたものこそ自由だ。


この辺がマルキシストたちの共感を呼んだのだろう。

私のこのころの予定では、ここから、
プルードン、バクーニン、クロポトキンへと、
アナーキズム関連書への旅をする予定だった。

ともあれ、この本、今から見れば、
で、いったい、どうするの?
ってところがさっぱりわからない。


以上、当時の読書ノートを引っ張り出して、
まとめてみたのだけれど、
「?」な部分もけっこうある。
誤読もしてると思う。

もう一度、精読してみたいと思ってはいるのだが。

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2012.08.13

西の魔女が死んだ

M書房さんへ宅急便でゲラを返し、
加筆原稿もデータ送信した。
一山越えた。

さあ、T社の原稿に集中。

●『西の魔女が死んだ』
  梨木香歩(新潮文庫)

泣ける小説という評価の定着した本。
なぜか「泣ける」というフレーズに
弱い私は、さっそく読んでみたわけだ。

女子中学生と祖母の物語。
テーマ的には、植村花菜の歌「トイレの神様」と
共通するものがあるかな。

なぜ、少女と祖母なのか?
男にはピンとこない組み合わせだ。


中学校に新入学した主人公は、不登校になり、
母方の祖母宅に預けられることになる。

祖母といっても、外国人。母はハーフだったのだ。
そして、祖母は、実は「魔女」だったのである。

ここで、これは何か現実離れしたファンタジーなのかと、
ふと危惧を抱いたが、そんなことはなかった。


品のいい「西の魔女」と暮らすうちに、
生活感を取り戻していく主人公。
しかし、思わぬ刺客がいた……。


祖母と気まずい別れをして家に戻った主人公は、
いつしかふつうに登校するようになっていた。

歳月は過ぎ、西の魔女はあの世に旅立った。
そして、起こった小さな奇跡。

まあ、これ以上ネタばらしするわけにはいかない。


私は、なぜか友情物に弱い。
だから、この少女と祖母の友情物語にも、
悔しいが、嗚咽してしまった。

人生には、取り返しのつかないこともある。
そして、思いがけない奇跡も起こる。

先ほどファンタジーではないといったが、
撤回しよう。
本書は、良質の、心優しいファンタジーである。

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2012.08.12

江ノ島植物園でガムランを観る

昨日は、高校の同級生と江ノ島に集まる。
毎年夏恒例。

江ノ島の植物園(江の島サムエル・コッキング苑)で、
バリ島のガムランのイベントを観る。

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インドネシアのビールと焼き鳥を食しながら。

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もう少し、暗くなってから、篝火か何かで見たかったなあ。
南洋の感じが出たと思うんだけど。
と、南洋好きとしては思った。

あとは、いつもの富士見亭に入って、
太平洋を見ながら杯を傾ける。

この同窓会も、もう19年目になるそうだ。
え~、いつの間にか、19歳も年くってたんだ!

これで、今年のたった1日の夏休みは終わり。

ポケットに忍ばせていったのは、
ローレンス・ブロックの『八百万の死にざま』
(ハヤカワ文庫)だった。

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2012.08.10

ドレの神曲

これも資料の一冊。

●『ドレの神曲』
 ダンテ原作/谷口江里也訳(宝島社)

私が読んだのは、岩波文庫版の『神曲』だが、
何しろ、文語体に慣れていない身には読みづらい。
途中で放り出してしまった人は多いはずだ。
翻訳は、現在、集英社文庫版(寿岳文章訳)、
河出文庫版(平川祐弘訳)もある。

しかし、抄訳だが、ドレの挿絵がついていて
読みやすい、この本を選んだ。

ドレの画が、神話的雰囲気をかもしだす。
本書は、最初、もっと大判だったが、
現在はコンパクトになってなお親しみやすくなっている。

本書を読んでから、岩波版、集英社版、河出版の
いずれかを読めばいいのではなかろうか。
河出の平川訳は読みやすいという評判だ。

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2012.08.09

ロマンティック・リハビリテーション

一つずつ仕事を片付けていく。
焦ってもしょうがない。

資料の一つ。

●『大西成明写真集
  ロマンティック・リハビリテーション』
  (ランダムハウス講談社)

実は、著者は、私の若き日の会社の同僚。
あのころは、お互い無我夢中だったなあ。
金も暇もなかった(笑)。
写真スタッフだった彼は、その後独立して、
いつの間にか、良質の仕事を残している。

著者は、写真週刊誌『フライデー』に、
全国の医療機関を取材した、
『病院の時代 バラッド・オブ・ホスピタル』
を連載していた(講談社出版文化賞等受賞)。

その間に知ったリハビリ施設に興味をもち、
今回の写真集を企画した。

本書では秋田から沖縄まで、
20のケースが紹介されている。
事故や病気の後遺症、先天的な障害などで、
必死にリハビリに取り組む患者と、
それを指導する療法士たちのストーリー。

皆いい顔している。
本書の冒頭に掲げられた、
「リハビリテーション 夢みる力」
というフレーズが胸を打つ。

登場した人たちは、むしろ、健常者より明るく、
エネルギーにあふれている。
そして、リハビリの現場には優しさの横溢。
ああ、人間が生きている。

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2012.08.08

センチメンタルな旅・冬の旅

資料のうちの一冊。
やはり、涙なしでは見られなかった。


●『センチメンタルな旅・冬の旅』
  荒木経惟(新潮社)

「センチメンタルな旅」は、陽子夫人との
新婚旅行の写真。

「冬の旅」は陽子夫人の闘病と死に至るまでの記録。
といっても、陽子夫人本人の写真は少なく、
通りすがりの街や自宅や愛猫チロなどの写真がほとんど。

その、なんでもない心象風景がまた泣かせるのだ。
アラーキーの思ひが、ファインダーのこちら側から
投影している!

こんな写真、天才アラーキーにしか撮れない。

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2012.08.07

純文学の、はからずもエロス

中高生のとき読んだ「純文学」で、
なぜか、とっても官能的に感じた
シーンがある。

いま、読むと、全然なんとも感じないのだが、
あのころは、衝撃的だった。

おそらく、作者は、意識的にはエロチックな
狙いはなかったのではないかと思う。
だが、無意識的には、エロスの匂いを感じ取って
いたのでは。


●「カインの末裔」有島武郎
 (岩波文庫『カインの末裔・クララの出家』所収)

主人公は貧しい農民夫婦。
チョイ悪の夫が、ある日、酔っ払って帰ってきて、
寝ていた妻に抱きつき、その口に、
ムリヤリ大福を詰めこむ。やらしい。
これだ。

「「……汝(わり)ゃ可愛いぞ。心から可愛いぞ。
 宜(よ)し。宜し。汝ゃこれ嫌いでなかんべさ」
といいながら懐から折木(へぎ)に包んだ大福を
取出して、その一つをぐちゃぐちゃに押しつぶして
息気(いき)のつまるほど妻の口にあてがっていた。」

という、まあ、別にエロでもなんでもないのだが、
深読みすれば、gag playの元祖みたいなものか(笑)。


●「静かな夏」吉田知子(新潮社『無明長夜』所収)

芥川賞作家のファースト短編集のなかの一作。
語り手が、アパートの共同風呂で腋毛を剃るシーン。
なぜか、そこに男が入ってくる。
語り手がクリームを拭くために、何の気無しに使って
いたのは、男が忘れていった下着だった。

「私はちょっとそれに触ってみる。右手はもちろん
頭の上にあげたまま。洗ってお返しするわと私は言う。
男が返事をしないので私は剃り続ける。急ぐと尚うまく
いかない。じゃ、早く洗って下さいよ、と男は言いながら
近づき、私から剃刀を取りあげる。男の頭から強い香料の
匂いがする。男は案外器用に剃りだす。右腕をつかんでいる
男の手は熱くて気持ち悪い。」

なお、この作者のホラー短編集『お供え』(福武書店)は
すごく怖い。お薦め。


●『悪い夏』倉橋由美子(角川文庫)

倉橋さんの本の初文庫化。短編集。
これは、もはや、はからずもエロスではないのだが……。
はじめて、こんな趣味もあるのかと、目を見開かされた本。
あえて、引用はしません。

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2012.08.06

綺想礼讃

付き合いで朝まで飲んだ。
でも、セーブしながら飲んだから、
ダメージは意外と小さい。
少しは、賢くなってきたかな。


●『綺想礼讃』松山俊太郎(国書刊行会)

拾い読みするつもりが、思わず、
入り込んでしまいそうになる。

教養文庫『小栗虫太郎傑作選』全5巻
の編集でも知られる、
碩学・松山俊太郎の作家論、というか、
敬愛する作家の作品の綿密な考証編。

谷崎潤一郎、日夏耿之介、宮沢賢治、
南方熊楠、正宗白鳥、小栗虫太郎、
稲垣足穂、江戸川乱歩、日影丈吉、
山田風太郎、埴谷雄高、三島由紀夫、
澁澤龍彦、種村季弘、沼正三、土方巽、
高橋睦郎、唐十郎。

これらの蠱惑的な作家たちの作品の
発想、引用、出典などについて詳述。
目の覚めるような発見ばかりだ。
しかも、見たことも聞いたこともないような
典籍ばかり。

熊楠の弱点や澁澤さんのネタ本ばらしなど、
知の怪人松山さんでなければ、書き得ない。
いやあ、これ、止まらなくなっちゃう。
深入りしないうちに仕事にかからなければ。

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2012.08.05

死因百科

M書房さんから宅配便でゲラが届く。
B文庫さんは、きのうの夜の10時ころに、
ゲラをうちの郵便受けまで届けてくださった。

仕事は一気にくる。

まずは、M書房さんの校正にかかり、
次にB文庫さんの加筆、校正だ。
これが終われば、2つの仕事の
山は終わる。

とはいうものの、T社の原稿もはやく
仕上げなければ。
こちらもなんとか先が見えてきたが。

クラクラする。

資料の1冊。

●『死因百科』マイケル・ラルゴ(紀伊國屋書店)

アメリカ人はどんな原因で死んでいるのか。
ノンフィクション作家のラルゴが、10年以上の
歳月をかけ、追究してきた成果だ。
全245項目。
「アイスクリーム」から「笑い」まで、
一見、死因と関係ないように見える原因が、
多数掲載されている。

さすがはアメリカ。
毎年、3人がワニに食われ、
30人がスカイダイビングで、
3761人がマスターベーション(?)
で死んでいる。

新しい発明や、レジャーが誕生すると、
死因が一つ増える。

この本を見ていると、死因には、
「フツー」なんてないのではないかと思える。

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2012.08.04

歯車

相変わらず、睡眠を、小分けにしてとり、
合間に仕事をする生活。

痴漢でつかまった男が、警察の調書を
盗み読みして、被害者の住所、電話番号を知り、
拘置所から被害者に手紙を出したという。

「あなたのことは知っています。可愛いね」とかって。

調書を盗み見られるなんて、なんと杜撰な管理!
犯罪者のプライバシーには異常なほど神経質に
なるくせに、被害者のプライバシーは
ないがしろにされる(怒)。
この反省もない痴漢野郎を去勢しろ(激怒)。

芥川龍之介の作品では、これがいちばん好き。

●「歯車」(新潮文庫『河童・或阿呆の一生』所収)

日本文学史に残るホラー小説だ。
幽霊、ドッペルゲンガー、幻覚……。
狂人による狂気のサンプル集といってもいい。

あえて、近い作品といえば、内田百間(門構えに月)の
怪談に近いだろうか。
日常にさりげなく潜む恐怖のたね。
あまりに当たり前のように書いてあるのがなお怖い。

このように限界近いような、恐怖と緊張のピリピリした
空気感。芥川の晩年作品特有だ。

主人公の見る「歯車」の幻視は、実は、偏頭痛の前兆現象
として、医学的に知られた現象である。
この幻覚のあと、激しい頭痛に見舞われる。

あんなことにならなければ、芥川はその後、
どんな作品を書いたろうか。
「続・歯車」を書いてみたい。

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2012.08.03

幽霊

ようやく、頭が回転するようになってきた。
このまま加速度がつくといいのだが。

オリンピック・バドミントンの無気力試合
には笑った。
あんな、バレバレの手を使うなんて。

夏になるたびに読んできた1冊。

●『幽霊』北杜夫(新潮文庫)

サブタイトルに、
「或る幼年と青春の物語」
とあるように、幼少期と青春期の追憶記。

タイトルから想像するような
怪談ではまったくない。


「人はなぜ追憶を語るのだろうか」

「どの民族にも神話があるように、どの個人にも
 心の神話があるものだ。その神話は次第にうすれ、
 やがて時間の深みのなかに姿をうしなうように見える」

こんな魅惑的な出だしから始まるこの自伝的小説は、
ある年齢以上になると、書き記すことのできない、
幼少期の甘美で不安な記憶を、蘇らせてくれるかのようだ。

まるで、私たちの幼年期の秘密が突きとめられたように。


作者の父・斎藤茂吉のうすい面影、
家出していった母の幻影、
少年という、淡く、不安定で、何か悲しい存在。


題名から感じられるような、陰気で、暗い小説ではない。
ときには、北特有のユーモアを漂わせながら、
それぞれの「あのころ」に、案内してくれる。
まるで、これが、自分の幼年期の記憶であったごとく。

昭和文学の、隠れ(失礼)名作。
そして、青春小説の神品でもある。

私にとっては、夏目漱石の「それから」、
三島由紀夫の「金閣寺」と並ぶ、
韋編三絶本(ちと大袈裟か)。

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2012.08.02

想像力博物館

きのうの『突飛なるものの歴史』と同じ
作品社の本。


●『想像力博物館』荒俣宏・館長(作品社)

荒俣さんの収集した驚異の図版が
惜しげもなくてんこ盛りにされた
夢の紙上博物館。

荒俣さんは、監修ではなく、館長となっている。

B5版313ページに所狭しと、
展示された貴重画像は圧巻だ。

順路案内(目次)によれば、館内は、
「視覚1」
「視覚2」
「万象」
「生物」
「比較/類似」
「流通/増殖」
の各コーナーに分かれている。

たとえば、「万象」コーナーの
構成はこうだ。
「権威を象徴する意匠」
「星座システム」
「地質変換」
「絵画的風景の視覚」
「動く風景と複数の視線」
「廃船幻想と夜」
などなどとなっている。


忙しい時の、気分転換用として、
この本を何度開いたことか。
開くページ、開くページに胸キュン(死語?)だ。
ほんとに贅沢の極み。


それにしても、この荒俣さんと、
澁澤龍彦さんが、もし日本にいなかったら、
この国の読書界はどれほど寂しかったろうか。

そして、このお二人の謦咳に接することが
できたというだけでも、
この業界に入って幸福だったと思う。

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2012.08.01

突飛なるものの歴史

資料以外の本を読む時間が
なかなかできない。

知らないうちにインストールされていた
変換ソフト「Baidu IME」は結構軽快だ。
すぐに変換予想が表示される。
携帯のメールみたいな感じ。

とくに、人名などの固有名詞が充実している。

澁澤龍彦、種村季弘、日夏耿之介などが、

すらっと出てくるところが憎い。
ええっ、このソフト開発しているのは、
どんな人なんだ?!

澁澤龍彦や種村季弘が愛読していたのが、
これだ(もちろん原書を)。

●『突飛なるものの歴史』ロミ(作品社)

現在は、平凡社から「完全版」が出ているが、
私の持っているのは、作品社のもの。

突飛な、
幻想動物、空想旅行、イマージュ、作家、物語
などが、豊富な図版とともに紹介される。

雑多な玩具箱を覗くような甘美な時間。
忙しいときに、拾い読みするのも楽しい。

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