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2012.08.03

幽霊

ようやく、頭が回転するようになってきた。
このまま加速度がつくといいのだが。

オリンピック・バドミントンの無気力試合
には笑った。
あんな、バレバレの手を使うなんて。

夏になるたびに読んできた1冊。

●『幽霊』北杜夫(新潮文庫)

サブタイトルに、
「或る幼年と青春の物語」
とあるように、幼少期と青春期の追憶記。

タイトルから想像するような
怪談ではまったくない。


「人はなぜ追憶を語るのだろうか」

「どの民族にも神話があるように、どの個人にも
 心の神話があるものだ。その神話は次第にうすれ、
 やがて時間の深みのなかに姿をうしなうように見える」

こんな魅惑的な出だしから始まるこの自伝的小説は、
ある年齢以上になると、書き記すことのできない、
幼少期の甘美で不安な記憶を、蘇らせてくれるかのようだ。

まるで、私たちの幼年期の秘密が突きとめられたように。


作者の父・斎藤茂吉のうすい面影、
家出していった母の幻影、
少年という、淡く、不安定で、何か悲しい存在。


題名から感じられるような、陰気で、暗い小説ではない。
ときには、北特有のユーモアを漂わせながら、
それぞれの「あのころ」に、案内してくれる。
まるで、これが、自分の幼年期の記憶であったごとく。

昭和文学の、隠れ(失礼)名作。
そして、青春小説の神品でもある。

私にとっては、夏目漱石の「それから」、
三島由紀夫の「金閣寺」と並ぶ、
韋編三絶本(ちと大袈裟か)。

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