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2012.09.19

断食芸人

カフカの代表作といえば「変身」か「審判」だろうが、
今回は、「断食芸人」をとった。


●『変身・断食芸人』カフカ
  山下肇、 山下萬里訳(岩波文庫)

この超短編には、近代的な悲劇の
エッセンスが詰まっている。
同時に、喜劇のエキスも。

断食するしか技のない芸人は、
しかし、プライドだけは高い。

いまでも、人気絶頂期の過去にすがるが、
凋落は覆い隠せない。
断食芸人は不服だ。

もはや、だれも見向きもしない、
断食芸人の存在さえ忘れられる。
誰も見張っていない断食にどんな意味があるのか?
死の直前、彼は監督に重要な内訳話をする。

「わしはな、美味いとおもう食物が
 みつからんかったからだよ。
 美味いものがありさえすりゃあ、なにも、
 人気集めなどせんで、おまえやみなの衆みたいに、
 たらふく食ってくらしとったと思うよ」

ああ、この身も蓋もなき告白。
あんたの一生、いったい、なんだったんだ!
断食芸人のプライドだけがすべてだった。
これこそ不条理。

人はなぜ、プライドなどというものをもってしまうのか。

最後に、ワラと一緒にさっさと葬られる断食芸人の死にざまに、
不謹慎ながら、ケタケタ笑ってしまった(ごめん)。

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