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2014.01.31

銀の匙

●『銀の匙』中勘助(岩波文庫)

最近、同名の漫画があるようだ。
こちらの作品は明治末期から大正初期の作。
夏目漱石が絶賛したことで知られている。

語り手の本箱の引き出しに大切にしまわれた
木製の小箱。
その中には小さな銀の匙が入っている。

その匙の思い出話から、読者はいつの間にか、
幼心の世界に誘(いざな)われている。

よくある子どもの頃の単なる回想ではなく、
まったく子どもの目で見たままの世界が
描かれているのだ。

いつも世話をしてくれた伯母さんとの日々、
お気に入りだった神田川沿いのお稲荷さん、
一緒に遊んだ女友達との出会いと別れ……。

とくに前篇の最後、おけいちゃんとの別れは
哀切だ。
まるで、自分の子どもの頃の体験のように
胸が切なくなってくる。

珠玉の作品とは、こういう小説のことを
言うのだろう。

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