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2014.09.24

大坪砂男全集1

『大坪砂男全集』といっても、最近出た
創元推理文庫版ではなく、薔薇十字社の箱入り
のものでもない。
薔薇十字社なきあと出された
出帆社の『大坪砂男全集』である。
箱はない。

『零人 大坪砂男全集1」
『天狗 大坪砂男全集2」

漸く、1巻目を読了した。
こちらは澁澤龍彦が解説を担当。

表題作の「零人」をはじめ、「涅槃雪」
「立春大吉」「髯の美について」などの佳作が
多数収められている。

全集としては玉石混交だが、どれをとっても、
奇想に満ちている。
また、作者の凝り性が裏目に出て破綻している
かのような作品もある。

しかし、「零人」のように、この作者でなければ
書けないような奇怪な幻想美あふれる作品を
読むと、つい贔屓にしたくなる。

ほかの作品もそうだが、「零人」の描写を
読んでいると鮮やかな映像が彷彿とする。
極度に視覚的なのだ。
可憐な美女を栄養素として育った妖艶な華。
およそ、現実にはありえない、その作品世界でしか
出会えない幻想風景。
これぞ、大坪砂男の真骨頂だ。

視覚の魔術師、大坪砂男とあえて呼ばせてもらおう。

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2014.09.23

殺戮にいたる病

9月になってから、生活、というか仕事に
ちょっとした変化がおきた。


●『殺戮にいたる病』我孫子武丸
 (講談社文庫)

乾くるみ『イニシエーション・ラブ』や、
歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』
などと同じ叙述トリックものの傑作。

ラストで「あれっ!」と思わせ、絶対、もう一回
最初からざっと読み返さざるを得なくなる。
謎は文章そのものに隠されているので、
映像化は不可能だ。

フェアかアンフェアか、評価が分かれるのも、
叙述トリックものの特徴だ。

異常性欲の持ち主で、猟奇殺人を繰り返す男。
事件は世間を震撼させるが、犯人は息子では
ないかと疑う母親。
そして被害者の一人と面識があった元刑事。

この3人の視点で物語は進行する。
ふー、叙述トリックものは、こうして中身を
紹介するのにも神経を使う。
うっかりするとネタバレしてしまうからだ。

で、すっかり騙された。
何か所か、疑問の生じた箇所を読み返してみると
つじつまはあっている。

少々グロい描写もあるので、苦手な人には
お勧めしない。

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2014.09.13

ラバー・ソウル

ついに朝日新聞が追い込まれたようだ。
慰安婦問題捏造をはじめ、日本を貶めるのに、
血道をあげてきた新聞の終わりの始まりか。

しかし、8月の慰安婦問題検証記事や
一昨日の謝罪会見を見ても、まったく根本は
変わっていないという印象をもった。


●『ラバー・ソウル』井上夢人
 (講談社)

驚愕のラスト、と聞いて読んでみた。

各章に、ビートルズのアルバム『ラバー・ソウル』
の曲名が当てられている。
主人公は、ビートルズマニアの鈴木誠。
ある理由のために、ほとんど他人とまともに
接することができずにきた。

その主人公がモデルの美縞絵里に恋をした。
彼女の住居の向いのマンションに部屋を借り、
望遠鏡、隠しカメラなどを仕掛けて、一日中
行動を監視する。
つまり、ストーカーになってしまったのだ。

それだけではない。
彼女に接近する男を次々殺してしまう。
絵里への想いはつのり、ついに、
誠は彼女の部屋への侵入を企てる。

ラストのどんでん返しは、確かにやられた
と思った。
恐怖が切なさに変わる。
しかし、腑に落ちない点もいくつかあった。
それでも、長丁場を一気に読ませてしまう
筆力はさすがだった。

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