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2014.09.24

大坪砂男全集1

『大坪砂男全集』といっても、最近出た
創元推理文庫版ではなく、薔薇十字社の箱入り
のものでもない。
薔薇十字社なきあと出された
出帆社の『大坪砂男全集』である。
箱はない。

『零人 大坪砂男全集1」
『天狗 大坪砂男全集2」

漸く、1巻目を読了した。
こちらは澁澤龍彦が解説を担当。

表題作の「零人」をはじめ、「涅槃雪」
「立春大吉」「髯の美について」などの佳作が
多数収められている。

全集としては玉石混交だが、どれをとっても、
奇想に満ちている。
また、作者の凝り性が裏目に出て破綻している
かのような作品もある。

しかし、「零人」のように、この作者でなければ
書けないような奇怪な幻想美あふれる作品を
読むと、つい贔屓にしたくなる。

ほかの作品もそうだが、「零人」の描写を
読んでいると鮮やかな映像が彷彿とする。
極度に視覚的なのだ。
可憐な美女を栄養素として育った妖艶な華。
およそ、現実にはありえない、その作品世界でしか
出会えない幻想風景。
これぞ、大坪砂男の真骨頂だ。

視覚の魔術師、大坪砂男とあえて呼ばせてもらおう。

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