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2014.12.21

薔薇十字社とその軌跡

今年も年末年始は休みなし。
ゆっくりできるのは元日くらいか。
まあ、仕事があるだけいい。


●『薔薇十字社とその軌跡』内藤三津子
 (論創社)

いまや伝説化している出版社、薔薇十字社の
経営者だった内藤三津子の回想録。
小田光雄によるインタビューで構成されている。
「出版人に聞く」というシリーズの一冊だ。

薔薇十字社の本は、古書店でもめったに見かけないし、
あっても高価だ。
箱入りの『大坪砂男全集』なんて、あこがれの的だった。
ほかにも、
『男色演劇史』堂本正樹
『吸血鬼幻想』種村季弘
『アンドロギュノスの裔(ちすじ)』渡辺温
『黄金時代』澁澤龍彦
『腐爛の華』ユイスマンス
などなど、魅惑的なタイトル
三十数点が出版されている。

なかでも、バルベイ・ドールヴィリの
『妻帯司祭』は出版と同時に倒産して
しまったために、幻の書となっている。

薔薇十字社の活動していた60~70年代といえば、
幻想文学や異端作家の作品が続々と出版されていた
夢のような時代だ。

だが、派手な表世界とはうらはらに、
これらの出版社の経営状態は芳しくなかった。
本書は、その綱渡りのような経営の実態が
明かされている。

また、薔薇十字社だけでなく、
内藤女史の渡り歩いてきた
出版社の内情もよく知ることができる。
雑誌『血と薔薇』の編集裏話なども面白いし、
内藤女史の澁澤龍彦、三島由紀夫、松山俊太郎
などとの交流の様子も心惹かれる。

全体的にインタビュアーの小田光雄が
しゃべりすぎなのだが、内藤女史の知らなかった
ような情報もあって捨てがたい。

いまの出版界の低迷を見るとき、
もう、二度とあのような活気は戻って
こないだろうな、と感慨がわく。

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