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2015.06.12

私は呪われている

●『私は呪われている』橘外男
 (戎光祥出版)

「ミステリ珍本全集」の6冊目は、
橘外男だった。

「私は呪われている」は著者が得意とする
化け猫ものである。
56年ぶりの復刊だそうだ。

夢野久作、小栗虫太郎、久生十蘭などの
異端作家たちは、ほぼ完全な全集があるが、
橘外男にはいまだにない。

と言っても、教養文庫や中央書院の
「橘外男ワンダーランド」などで、
代表作を読むことはできる。

橘外男は、ほとんど同じ内容の作品を、
タイトルだけ変えて出すという癖があり、
それが全集化を妨げているようだ。

さて、「私は呪われている」である。
ある日、島根県と広島県の境目にある小さな町
の警察署へ、化け猫を見たという学生が飛び込
んできた。
なんでも、老坂村という村で僧に化けた猫が
人骨をかじっているのを見たというのだ。

学生は、帰郷してから奇病で死に、
次いで、水戸の警察署長が実の妹を殺害
するという事件が起こる。
彼らが事件の前に訪れたのも老坂村だった。

老坂村に何かがある!
最初に学生が駆け込んできた警察署の署長が
調査を開始した。

そして、老坂村のおぞましい過去が明らか
となったのだ。
その昔、この地域に暴虐な領主がいて村人の
恨みをかっていた。
この領主の息子、八千丸は善人で、父が村から
強奪した財宝を返そうとしたのだが、
あろうことか村人に惨殺されてしまう。

かつて、八千丸に命を助けられた猫が、
主人の敵をとるのだが……。

橘外男の怪談は本当に怖いが、
この作品は怪談というより復讐譚で、
化け猫のほうに感情移入してしまう。

語り口も、独特の饒舌調で、
一気読みさせられる。

本書にはほかに、「双面の舞姫」「人を呼ぶ湖」
など5つの作品が掲載されている。

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2015.06.11

自由未来

街でいちばん大きな書店に行って驚いた。
明らかに、在庫数が減っているのだ。
山のようだった平積みコーナーも、
小さな山でしかなくなっている。
全体的にスカスカした感じなのだ。

これはそうとうな危機だ。
このクラスの書店が潰れていったら、
出版業なんて成り立たなくなる。
この業界、いったいどうなるのだ。


●『自由未来』ロバート・A・ハインライン
 (早川書房)

1964年の作。
SF界の巨匠ハインラインの作品としては、
あまり有名ではないかもしれない。

この作品を初めて知ったのは、
中学生だったとき。
少年マガジン(たぶん)巻頭の
SF特集でだった。
水木しげるさんが挿絵を描いていた。

いつかは読もうと思いながら、
40年以上も経ってしまった。
しかし、いま読んでもおもしろかった。

まだ、冷戦時代。第三次世界大戦が起こり、
主人公たちは核シェルターごと、
2000年後の世界にタイムスリップしてしまう。

そこは、黒人が支配し、白人が“食用”と
されている想定外の世界だった。
主人公は捉えられ、仕事をあてがわれるが、
ひそかに脱出の機会を狙っていた……。

現在では、ドラマでもやたら
タイムスリップものが流行っていて、
食傷気味だが、
このころはまだ新鮮なテーマだった。

さすがに、冷戦時代の作品なので古さは
感じられる。
だが、そこはハインライン。
設定がショッキングで、冒険活劇要素や人間ドラマ的
要素もしっかり書き込まれていて読ませる。

まあ、おもしろいといっても、
『夏への扉』には及ばないけど。

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