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2017.01.10

キャリー

仕事の関係上読んだ、いまさらのキングの傑作。
すべてはこの一冊から始まった。
あやうく捨てられかけていたキングの短篇原稿を、
妻が拾ってキングに長編化するよう勧めた。
そして誕生したのが『キャリー』である。

三度も映画化された作品だから、あえてストーリーを
紹介するまでもないだろうが……。
物体を動かす超能力(テレキネシス)を持つ
キャリー・ホワイトは、狂信的なキリスト教信者の母親に
厳しく育てられ、学校ではいじめられっ子である。

そんなキャリーに、人生最大の晴れ舞台が訪れる。
クラスメートのはからいにより、学校の舞踏会に、
男の子から誘われたのだ。

だが、狡猾な女子生徒の一人の罠に陥る。
仕込みによって舞踏会のクイーンに選ばれたキャリーに、
天井から豚の血が浴びせられた。
生徒たちの哄笑のなか、ついにキャリーは一線を超える。
キャリーの能力が解放されたのだ。
恐るべき破壊の嵐。学校はもとより街は壊滅的打撃を受ける。

随所に挿入された学術書、報告書、裁判証言などの断片により、
最後に何かが起こるのは予測されるが、それがある種の
リアリティを与えている。

すでにユリ・ゲラーをはじめとする超能力ブームの過ぎ去って
しまった現代ではあるが、この作品の魅力は古びていない。
それは現在でも、キングの巧みな小説作法により、
この悲劇のヒロイン、キャリーへの深い共感が、
呼び起こされるからだろう。
怪物のようなこの少女にも、普通の少女の幸せを求める
権利はあったのだと。

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