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2017.04.07

匣の中の失楽

●『匣の中の失楽』竹本健治(講談社文庫)

本の中には、すっかり読んだつもりになっていて、
実は読んでいなかった本というものがある。
『黒死館殺人事件』『ドグラマグラ』『虚無への供物』と
並び称される本書もそうだった。
若い時に読んでいたものだと思い込んでいたのだ。

現実と虚構が複雑に織り成され、読者は心地よく翻弄される。
いくつもの密室殺人事件が起き、一応、謎解きは
されるのだが、本書の醍醐味は、『黒死館殺人事件』を
思い起こさせるペダントリーにあるだろう。
密教から相対性理論まで、魅惑的な題材が惜しげもなく
披露される。
それが、本書を単なるミステリーでなく、一種の哲学小説としても
成り立たせている。

これが22歳の青年によって書かれたとは。
恐るべし。

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