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2017.06.27

成層圏魔城

●『成層圏魔城』小栗虫太郎(桃源社)

後期の異郷ものがほとんどを占めている。
「黒死館殺人事件」をはじめとする
法水麟太郎もので一時代を築いた虫太郎は、
その後、魔境もの、異郷ものに新境地を見いだす。

多くの評者は、この魔境もの、異郷ものは評価
していない。
澁澤龍彦もその一人で、ここではすでに、
初期の虫太郎独特のスタイルが崩れていると
している。

たしかに、本書の異郷ものは、黄金期の
法水麟太郎ものとはまったくの別物だ。
だが、そこには必死で新境地を開拓していった
虫太郎の熱情が見てとれる。

なかでも、子ども向きではあるが、表題ともなっている
「成層圏魔城」はおもしろかった。
絶筆となったわずか数ページの「悪霊」も掲載されていて、
もし、虫太郎がもう少し長生きしていたら、
また、新しい境地を拓いたであろうと悔やまれる。

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2017.06.06

64(ロクヨン)

●『64(ロクヨン)上下』横山秀夫(文春文庫)

刑事から左遷されてD県警の広報官となった
主人公・三上の苦悩と奮闘を描く。
娘には家出され、記者クラブからは激しい
突き上げをくらい、組織の板挟みとなる主人公。

また、D県警は、昭和64年に起きた誘拐殺人事件、
通称「64」にかかわる闇を抱えていた。

重く、息詰まるような場面が連続する。
正直、読むのが苦しいほどだった。
だが、終盤、物語は思わぬ展開を見せる。
なるほど、この結末。
これは意外だったなあ。

なお、本書は、英国推理作家協会賞翻訳部門に
最終ノミネートされたそうだ。

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