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2018.05.27

月の満ち欠け

●『月の満ち欠け』佐藤正午(岩波書店)

第157回直木賞受賞作。
不思議な小説である。
生まれ変わりという、古くて、手垢のついた
テーマを扱いながら、新しい。

主人公・小山内堅の間に前に現れた
ひとりの少女。
その少女は、自分の亡き娘の
生まれ変わりだという。

受け入れがたい話でありながら、
次々と明かされる事実に、
主人公は現実感を失ってゆく。

読者は、物語の迷宮にいやおうなく、
引き込まれる。

まったく異なる切り口でありながら、
同じテーマを描いた作品として
本作を読みながら思い出していたのは、
三島由紀夫の『豊饒の海』だった。

『豊饒の海』では、最後に大どんでん返しが
待っているのだが、この物語ではどんな結末が
用意されているのか。

本作では、「純愛」の成就という、もうひとつの
テーマも清冽に描かれている。

忘れがたい読後感を残す作品である。

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