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2018.06.24

ふがいない僕は空を見た

●『ふがいない僕は空を見た』窪美澄
 (新潮文庫)

山本周五郎賞受賞作。
以前から、タイトルが気になっていた作品
だったが、予想を覆される衝撃作だった。
何か、もっと、切ない青春小説のような
ものを想像していた。

冒頭は、ポルノ小説かと思わせるような
露骨な性描写が続く。
本のチョイスを間違えたかと思ったけれど、
読み進むうちに、どんどん引き込まれていった。

五編の短編からなる連作長編なのだが、
どれも救いがたい物語だ。
あがらいがたい「性(さが)」に囚われた者たち。
年上の主婦とのセックスにのめりこんでいく
高校生。
非はないのに不妊を姑になじられる主婦。
認知症の祖母を抱えて生活苦にあえぐ男子生徒……。
だが、その救いのない世界にも、一筋の光明が
さしこむ。

なにより、登場人物たちにそそぐ作者の優しい
眼差しが感じられる。
だから、読後はある種爽やかな感慨に
襲われる。
どんな境遇に置かれようが、生きることには
何か意味があるのかもしれない。

気になる作家がまた一人見つかった。

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