« スクラップ・アンド・ビルド | Main | 怪奇クラブ »

2018.08.25

いまは、空しか見えない

●『いまは、空しか見えない』白尾悠(新潮社)

今月で閉店するという高田馬場のブックファーストで、
最後に買った本。
高田馬場も新刊書店はとうとう芳林堂だけになった。
早稲田の古書店もどんどん減っていくし、
寂しくなったものだ。

本書は第16回女による女のためのR-18文学賞の
大賞と読者賞をW受賞している。
帯で三浦しをんさんと辻村深月さんが絶賛している
ので読んでみることにした。

なるほど、いい感性してるねえ。
受賞作「夜を跳びこえて」(「アクロス・ザ・ユニバース」
改題)ほか全5編からなる連作集。

山梨県で厳格な父親に抑圧された生活を送る
女子高生・智佳(ともか)。
ある日、親に内緒で、東京まで憧れのホラー映画監督
の講演会を聴きにでかける。
ところが、行きの長距離バスのなかで同じ高校の、
お馬鹿ギャル・優亜と一緒になってしまう。

しつこく付きまとう優亜をもてあます智佳だが、
なぜ東京にでてきたかを打ち明けられると、
彼女に協力することにした。

智佳と優亜の企ては失敗するが、その夜、
智佳ははじめて父親に反抗する……。

微妙な年頃の少女たち。
傷つきやすく、もろくも、懸命に立ち上がろうとする
彼女たちを応援したくなる。

たしかに女性でなければ書けない繊細さ。
ディテールも丹念に書き込まれている。
映画関連会社にいたという作者ならではの、
ドラマ、映画づくりの現場描写もリアリティがある。

読後、あたたかい余韻を残す作品だ。

|

« スクラップ・アンド・ビルド | Main | 怪奇クラブ »