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2019.10.15

事典の語る日本の歴史

●『事典の語る日本の歴史』大隅和雄(講談社学術文庫)

私が『知の分類史』を出したときには、まだ文庫化
されていなかった。
もし先に文庫化されていたなら、ぜひとも参照したかった。

日本の歴史上に編纂された代表的な事典をとりあげ、
その時代の「知」を総覧していこうという試みで、
おおいに触発された。

取り上げている事典は『類聚国史』から
『日本百科大辞典』まで13点。
なかには『太平記』のような軍記物まで含まれている。
なぜ、『太平記』が事典に含まれているのか、
疑問に思われる方もいるかもしれない。

しかし、物語は、ホメーロスの『イーリアス』の時代から
百科事典の役割を持っていたのだ。
当時の人たちは、物語に描かれる事物を元に知識を
広げていった。

本書は日本人がいかに「知」を集積しようとしてきたか、
その苦闘を描いて興味がつきない。

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2019.10.01

白痴

●『白痴』坂口安吾(新潮文庫)

高校生の時代にこの本を読んだ私は、
痺れるような衝撃を受けた。
なかでも、最初に掲載されていた
「いずこへ」という短編にやられた。

「一番汚いところまで行ってやれ」という
一文が目に焼き付いた。
「私はそこのころ耳を澄ますようにして
生きていた」という出だしから始まる
この作品はおよそ、現代の純粋な恋愛などと
いうものとはかけ離れている。

男の元へは一人の女が通うようになっていた。
それとともに男の部屋には釜、鍋、茶碗、箸、
皿、それに味噌の壺だのタワシなどといった、
「汚らしいもの」まで住みはじめた。

男はそれを拒絶するのだが、女はとりあわなかった。
男はもはや自分の考えに固執するだけの「純潔に
対する貞節の念がぐらついていた」

男のまわりにはこの女のほかに、よく飲みに行く
「十銭スタンド」の女店主がいた。
多淫な女で、酔うと店の客に泊まっていくよう
口説くのだった。

女店主は男も口説いたが取り合わなかった。
ところが、ある日、男はこの女店主をふと
思い出し、今度こそ泊まってやろうと決心する。
「一番汚いところまで、行けるところまで
行ってやれ。そして最後にどうなるか、
それはもう、俺は知らない」

全体に漂う虚無感というか、諦念というか、
高校生の私には刺激が強すぎた。

のちにこの作品は現代思潮社のアンソロジー
『風狂』に収められていることを知った。
国立にあった東西書店で買った本だ。

同時期に読んだ『堕落論』は高校生の私には
難しすぎた。

安吾の作品ではあとやはり「夜長姫と耳男」と、
「桜の森の満開の下」だなあ。

これからも安吾作品は再読していきたいと思った。

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