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2019.10.01

白痴

●『白痴』坂口安吾(新潮文庫)

高校生の時代にこの本を読んだ私は、
痺れるような衝撃を受けた。
なかでも、最初に掲載されていた
「いずこへ」という短編にやられた。

「一番汚いところまで行ってやれ」という
一文が目に焼き付いた。
「私はそこのころ耳を澄ますようにして
生きていた」という出だしから始まる
この作品はおよそ、現代の純粋な恋愛などと
いうものとはかけ離れている。

男の元へは一人の女が通うようになっていた。
それとともに男の部屋には釜、鍋、茶碗、箸、
皿、それに味噌の壺だのタワシなどといった、
「汚らしいもの」まで住みはじめた。

男はそれを拒絶するのだが、女はとりあわなかった。
男はもはや自分の考えに固執するだけの「純潔に
対する貞節の念がぐらついていた」

男のまわりにはこの女のほかに、よく飲みに行く
「十銭スタンド」の女店主がいた。
多淫な女で、酔うと店の客に泊まっていくよう
口説くのだった。

女店主は男も口説いたが取り合わなかった。
ところが、ある日、男はこの女店主をふと
思い出し、今度こそ泊まってやろうと決心する。
「一番汚いところまで、行けるところまで
行ってやれ。そして最後にどうなるか、
それはもう、俺は知らない」

全体に漂う虚無感というか、諦念というか、
高校生の私には刺激が強すぎた。

のちにこの作品は現代思潮社のアンソロジー
『風狂』に収められていることを知った。
国立にあった東西書店で買った本だ。

同時期に読んだ『堕落論』は高校生の私には
難しすぎた。

安吾の作品ではあとやはり「夜長姫と耳男」と、
「桜の森の満開の下」だなあ。

これからも安吾作品は再読していきたいと思った。

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